54話感想

※自分の記録用。戯れ言が含まれるので、肌に合わない方は閲覧ご遠慮願います。

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同時進行する3つの場面。今回はそれぞれの心情より、釈然としない謎だけが残った。

──クラブママと黒服

盗難被害の連鎖が止まらない。神谷の私刑を苦々しく見つめるクラブママ。どこか後ろ暗い表情は凄惨な光景を直視出来ないからか、はたまた騒動に一枚噛んでいるからか。黒服は恐らく、事情も知らされない手先だろう。ママが堪らず神谷を制したのも、庇ったというより呵責に苛まれたようにも見える。まだまだ謎多き女性だが、ともあれ今回でようやく彼女の名が明らかになった。名ありとなったからには、多かれ少なかれ役割のある人物だと思われる。

──『迷惑かかるから』

どうやら百目鬼とクラブママ、男女の仲といった軽々しい関係ではなさそうだ。ママ(泉)が秘密裏に誰かを匿っている。或いは逃がそうとしている。知ってか知らずか百目鬼はその協力者(にさせられている)……の様相が漂う。何話か前、強盗は自作自演ではないかと述べたが、誰かを庇っているならそれも必要に駆られた撹乱作戦、または泉自身が敵対者の命で動いているのかも知れない。

──動画の中身

以下、先日目にしたとある意見の引用(要旨)

『なぜ場所も知らない百目鬼の部屋の様子を、井波が隠し撮り出来たのか。直近まで百目鬼が関わってることすら知らなかった男が、数時間でそこまでの策を思いつくはずがない。あれは井波自身が撮影した、矢代とのハメ撮りだってことぐらいすぐに分かりそうなもの。それが分からない人は(騙されやすい)詐欺に遭わないか心配』

まるで他の読者を見下すような主張だが、これについては異議あり。

1)動画は井波自身が撮ったものとは限らない。悪意ある他者が撮影したものを、巡り巡って井波が入手した可能性はないか。実際作中でも

『こんなデータはいくらでも残せる』『クラウド知らねーのか?!意味ねぇだろ』

などなど、情報網には事欠かないことを匂わせる発言がある。

2)撮影されたのが直近ではなく、4年前の抗争の最中だったとしたら?

3)例の動画にはハッキリと両者の顔が映っていた。被写体が井波と矢代なら、仮にも刑事である男が、自ら身を持ち崩すような証拠を第三者に提示するとは思えない。

4)自身と矢代の性行為で誰を脅せるのか。果たしてそれが百目鬼への揺さぶりになり得るのか。単なる焚きつけ、当てつけの材料にしてはリスクも高く、井波の払う代償が大きすぎる。それすら頭になく、勢い余った挑発だとしたらあまりに愚策、悪手と言う他ない。

可能性は多方面から考えるべきだろう。作中で明かされていない限り正解はないからだ。従って自分優位、持論正義に断言するのは些か強弁ではないか。

なお、百目鬼不在に関しては矢代が謎めいた台詞を残している。

『別のモン売りに』

井波のもとへ向かった目的、そこで行われるであろう取引まで把握しているかのようだ。万に一つ、動画を撮らせたのが矢代本人だったら──

以上、率直に感じた疑問のみ抜粋。泉のきな臭さも否めず、矢代も掴みどころがない。そして4年の間に起こした悪事……百目鬼がじりじりと袋小路になりつつある気がする。ひとまず井波にはナイスアシスト賞を。