言葉の壁があっても趣味は友達のサークルを広げてくれる

アメリカに留学する前にいろいろな留学準備本を読みあさった。そのうちのひとつで今でもとても心に残っているアドバイスがある。それは

趣味があると友達を作りやすい。どんな趣味でもよいから、関連するサークルやクラブなどに入ると言葉の壁があっても共通の趣味を通じで友達ができる。
というものだった。

これはもう本当にそのとうりだった。多少英語が話せなくても、趣味という共通のコトがあれば友達ってできていくのだ、ということをアメリカで実際に体験した。コトは何でもいい。スポーツでも音楽でもアニメでもなんでもいいのだ。私の場合はウインドサーフィンという超マイナーなスポーツだった。これはもと夫からの遺産で夫がきっかけで始めたスポーツだ。サンフランシスコを留学先と決めたのも実はウインドサーフィンに適した場所だったからという理由もあった。

ウインドサーフィンとはサーフボードにマストとセールがくっついて風によって動くスポーツだ。サーフィンとセーリングのあいのこみたいな感じでスポーツ人口は少ないが、サンフランシスコ湾にはいくつか有名なウインドサーフィンのサイトがあった。

短大でもがきながらもなんとか1学期を終えようとしていた私は、少し余暇を楽しんでもいいかなと思えるようになってきた。1月に入学して以来ひたすら短大と家を行き来して時間があれば勉強に没頭していた。それくらい大変だったのだ。

ふと気が付けば短大のクラスメートと軽く話す以外の話す相手はロバータとときたま開かれるパーティなどで出会う彼女の友達だけだった。
そうだ、仲間をつくらなければ!

短大では友達になれそうな人に出会うことはなかった。留学準備本がアドバイスしているように、共通の何かがなければ友達ってできないものなのだ。それに加えて英語がまともに話せないというハンディがある。

私の住む町には当時ウインドサーフィンのショップがいくつかあった。そのうちの一つに行ってみた。サーフショップによくある、俺たち特別だぞー的な仲間意識の強そうなサーファーっぽい男子が数人フーズボール(台に乗っかった人形みたいのでボールを蹴るサッカーゲーム)で盛り上がっていた。声をかけにくそうな雰囲気だったが、勇気をだしてウインドサーフィンの道具のレンタルはできないか聞いてみた。

レンタルはないけれど、ウインドサーフィンができるクラブがあると教えてくれた。話してみると案外親切な男子たちだった。さっそくそのクラブに出向いてみることにした。

教えてももらったクラブは私の住む町のマリーナにあった。非営利団体(NPO)でウインドサーフィンとセーリングのレッスンと道具のレンタルができるところだった。クラブはすべてボランティアによって運営されていて、レッスンから道具の管理まですべてボランティアが行っていた。

大きな期待もなく立ち寄ってみたセーリングクラブだったが、この先このセーリングクラブが私のアメリカ生活でとても大きな存在となっていく。

私の仲間のほとんどはこのセーリングクラブを通じて知り合うことになった。まさに留学本が言っていたとおり趣味は友達のサークルを思いきり広げてくれた。仲間どころか、つきあったボーイフレンド、今の夫、そしてベストフレンドたちも含めて人生にとって重要な人たちにもこのクラブを通じて出会っている。

そして大学に通うだけでは知り合うことのなかったであろう、様々な年齢、職業、出身地(アメリカ国内外)、経歴などいろいろな人たちに出会うことができた。私の住む町には大きな大学があり、世界各地から研究者や留学生が訪れていた。このクラブには大学の関係者が多く参加していた。

このセーリングクラブがそんな重要なところになるとはこの時は想像もしていなかった。とりあえず数か月試してみよう的な軽いきもちで入会したのだ。出会いはどこにころがっているかわからないもので、セーリングクラブとの出会いはアメリカ生活でもっとも大きな出会いの一つだったと思う。

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