静かな山奥での勉強モードオンな生活

シーラの出戻りがきっかけになり、リンダの家を出ることになった。タイミングってあるんだなと思ったけれど、ロバータのうちで暮らさないという申し出はものすごくありがたかったし、時期としては最高のタイミングだった。

なぜかというと1月から大学に通うことになっていたからだ。

無事に英語学校は卒業したものの、これからは英語の勉強ではなくカレッジに通って英語で授業を受けることになるのだ。入学許可はでたものの、本当に授業についていけるのか不安だった。

リンダの家では、交換留学生などがよく体験するようなさまざまなアクティビティを楽しませてももらったけれど、これからは本格的に勉強しなくてはならない。遊んでいる暇はないのだ。

私は全力で勉強モードに入っていった。

ロバータの家はサンフランシスコ湾を一望に見渡すことができる山の中腹に建っていた。家は斜面に建っていて2階から出入りするようになっている。高原の別荘などによくあるタイプの設計だ。

家のまわりにはユーカリや松、杉などカリフォルニアによくあるエバグリーンの木々がうっそうとしげっている。鹿の親子や歩いていたり、りすやウサギが走り回る。サンフランシスコの市街地まで車で1時間もかからない距離なのに、まわりはすっかりリゾートっぽい高原の雰囲気だった。

玄関から中にはいると、大きなリビングルームがあり目の前にはうわーっとサンフランシスコ湾と高層ビル群の絶景が広がる。リビングルームの先にはダイニングとキッチンがあり、アメリカでよくあるオープンプラン(リビングとダイニングとキッチンに仕切りがなくオープンでつながっている間取り)のひろびろとしたレイアウトだ。

私の部屋は玄関から入ってすぐのところにありその隣にはロバータのマッサージルームがあった。ロバータはマッサージセラピストで気功を中心にしたマッサージを施行する。口コミだけなので1日に1組くらいのクライアントがやってくる。

階下にはロバータの寝室と書斎があった。上下階にトイレとバスルームがそれぞれついている。このくらいの広さの家には最低でもトイレとバスルーム(シャワーかバスタブ)が2つ以上はついているのがアメリカの典型的な住宅だ。

ロバータは2匹の猫と1匹の犬と暮らしていた。テリアミックスのルーシーはわんこ好きの私にとってはものすごく心安らぐ存在だった。私の部屋にしょっちゅう遊びに来るようになり、あたりまえのようにどっこらしょとベットにあがりこんですとんと寝てしまう。勉強で殺気立っているとき、ルーシーの寝顔をみるととてもやさしい気持ちになれた。

この静かな環境で私の最初の勉強漬けの毎日が始まった。短大の授業を受けるのは想像以上に大変だった。そりゃあそうだ。1年前にはまともに英語がしゃべれなかったのだ。難しいのはあたりまえなんだ、と自分に言い聞かせて勉強に没頭した。


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