アメリカのコミュニティカレッジという仕組み

アメリカの都市には政府で運営している短大があり、コミュニティカレッジと呼ばれている。コミュニティカレッジは2年制で、学位を取得することを目的としたコースと、看護師や会計士など職業を持つための職業訓練に特化したコースがある。学費は公立の4年制大学より低く特に社会人になってから大学に戻りたい人や学生ローンに頼る人たちにはありがたいシステムだ。

私が入ったのは学位をとるためのコースで、生徒の大半は高校を卒業したばかりの子から20代で学校に戻ってきた子たちだった。ちなみにアメリカでは高校を卒業してもすぐに大学に入らず海外を放浪したりバイトをしながらいろいろな経験をする子たちが多く存在する。

コミュニティカレッジで2年間の教養課程を修了すると、地域の公立4年生大学の3年に編入することができる。カリフォルニアでは州立の4年生大学にはコミュニティカレッジから3年生に編入する生徒枠が確保されているからだ。このしくみは高校卒業時に希望の大学に入れなかった子たちのセカンドチャンスだし、高校を卒業して数年たってから大学に入ろうという人にとっても4年生の学位を取るハードルを低くしてくれる便利なものだ。おまけに2年間のコミュニティカレッジの学費は4年制大学よりも低いのでお金を節約することもできるのだ。

このしくみを利用することによって、カリフォルニア州立大学でも難関とされている大学に編入する可能性が広がる。とくに私の住んでいた地域には超難関のカリフォルニア大学バークレー校(U.C. Berkeley)があった。この大学は世界的にも有名な公立大学で多くのノーベル賞受賞者を輩出しており1年生から入学するのはとても難しい。

高校を卒業してすぐにバークレー校に入学できなかった子は、コミュニティカレッジで教養課程を終えてバークレー校に編入するというセカンドチャンスを狙う。もちろん編入するためには教養課程での成績を最高点に保たなければならないのですべての人が編入できるとは限らない。

私の入ったコミュニティカレッジは、バークレー校への編入率が特に高い短大だった。ゆえにクラスメートの大半はバークレーを目指してクラスで高得点をとるために殺気立っていた。相手を蹴落として上位に上がっていく。アメリカの競争社会は容赦ないのだ。

なぜこんな競争の激しいコミュニティカレッジに入ってしまったのかというと、それまで通っていた英語学校を卒業すると簡単な手続きだけで入学できるシステムがあったからだ。そうでもなければこんな殺気立ったコミュニティカレッジは選ばなかった。

入学は簡単にできたが、授業を受けるのは大変だった。バークレーをめざして躍起になっているアメリカ人のクラスメートを横目に、英語もまともにできない留学生の私は、完全な落ちこぼれだった。

なんといっても授業を完全に聞き取ることができないのだ。
そして授業で発言できないし、質問できない。アメリカでは授業で発言できない生徒は能力がないとみなされてしまう。授業は聞くだけではなく、ディスカッションをするところなのだ。生徒からの質問が次々に飛んでくる。先生だって真剣勝負だ。

学校のブックストアで購入した分厚いテキストブックと、教授から渡されたカリキュラムのペーパーを前に途方に暮れてしまった。

こ、これからどうしよう。

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