『背骨の末端』(小説)
「駅前のホテルなんですけど」
「はい」
「できるだけ海沿いを走りつつ」
「はい」
「遠回りしてもらってもいいですか?」
「遠回りですか?」
「はい。遠回り」
「いいですけど」
「ありがとうございます」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫?」
「はい。大丈夫ならいいんですけど」
「大丈夫です」
「さようですか」
さようなんですこう見えて結構大丈夫なんです、と言ってワンピースの裾を整えながら笑ったけれど、笑顔をどこに向けるべきなのかよくわからない。あるいは笑わなくてもよかったのかもし