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夏きもので行く! 増上寺盆踊り

2023年7月22日。
港区芝公園にある増上寺の地蔵尊盆踊り大会に行ってきました。


芝公園駅で降り、地上に出た瞬間に聞こえてきたセミの大合唱。
我が家の近くにも大きな公園があるのですが、園内を歩いていても、か細い声がひっそりと聞こえてくる程度です。
ふだんの暮らしで大音響のセミの声を聞くことはまずないので、すごく夏らしさを感じました。
増上寺の境内やその周辺は、こんなにたくさんのセミが生息できる、ゆたかな自然の土があるのでしょうね。

増上寺とは

増上寺ぞうじょうじは、浄土宗の七大本山の一つ。
酉誉ゆうよ聖聰しょうそう上人によって、明徳4年(1393年)に江戸貝塚(現在の千代田区平河町付近)の地に創建されたのが始まりで、開山から600年を超す歴史を持つお寺です。

今年の大河ドラマは、松本潤さん主演の『どうする家康』ですね!
増上寺は徳川将軍家ゆかりのお寺としても知られています。
徳川家康が関東の地を治めるようになってまもなく、増上寺は徳川家の菩提寺に選ばれたそうです。
そのため、増上寺には徳川将軍15代のうち、2代秀忠、14代家茂など、6人の将軍の墓所があります。
徳川将軍家墓所には正室と側室の墓もあり、その中には家茂の正室として降嫁した皇女和宮の墓も含まれています。
歴史好きや大河ドラマファンにとって、一度は参詣したい史跡ですね。

旧台徳院霊廟惣門の前にて

夏こそ、小千谷縮!

よく晴れて暑い日だったので、爽やかな色合いの格子柄の小千谷おぢやちぢみに、ミンサー織りの半幅帯を合わせました。
縞の半衿は、スタイリストの大森伃佑子さんがディレクターを務めるDOUBLE MAISONというブランドのお品です。

小千谷縮は、新潟県小千谷市で織られている麻の着物です。
材料は苧麻ちょまという上質の麻で、今風に言うと、オーガニックラミー100%で作られています。

古来から越後国(現在の新潟県)は麻織物の産地で、今では平織のものは越後えちご上布じょうふ、縮織のものは小千谷縮と呼ばれます。
越後上布、小千谷縮は共に国の重要無形文化財に指定され、2009年にはユネスコの無形文化遺産にも認定されました。

小千谷縮は、布面に「シボ」と呼ばれる波状のしわがあるのが特徴です。
シボの凸凹が、ふんわり風をはらんで、着心地抜群。
暑い時季は、しばらく同じ姿勢で座っていると、立ち上がったときに、着物のお尻やひざ裏あたりが汗でしわしわ。
しかし、小千谷縮であれば、もとからしわしわなのでまったく気にならず、自然な風合いで涼しそうに見えるのです。
お手入れも簡単で、わたしはネットに入れて洗濯機で洗い、着物用ハンガーにかけて室内干ししています。

こちらの小千谷縮の織元は、杉山織物さん。
自装の練習をしていた頃、母と相談しながら、自分好みの色柄の反物を選び、マイサイズで誂えたものです。
コロナ禍の間、外出の機会が少なかったので、この小千谷縮にも4年ぶりに袖を通しました。

締めやすく、ずれにくい! 八重山ミンサー帯


小千谷縮に合わせたのは、沖縄県の伝統工芸品に指定されている八重山ミンサー帯です。
織元は沖縄県石垣市にある、みんさー工芸館さん。

ミンサーとは「綿ミンサー」または「綿ミンサー」の意味だそうです。
綿メンではなく、綿ミンと発音する理由は、沖縄の言葉(琉球語)の基本母音が「a」、「i」、「u」の三音のみで、「e」、「o」がないからなのだとか。

「綿狭」は綿狭織めんさおりのことで、綿で織られた幅の狭い帯を指していて、古くは『万葉集』にも記述があります。

いにしえの狭織の帯を結び垂れたれしの人も君にはまさじ

『万葉集』巻十一相聞より

「綿紗」はと言うと、更紗さらさの「紗」のことであり、綿花糸で織られた布を指しています。

八重山ミンサーの特徴は、「五つ玉」(五つの四角形)と「四つ玉」(四つの四角形)で構成された絣模様です。
この「五つ」と「四つ」は、「いつの世までも末永く幸せに」という願いが込められているそうです。

絽など透ける生地で作られた夏用の帯は、くたくたしてやわらかいものや、光沢があってつるつる滑るものが多いです。
いかにも涼しそうで見た目は美しいのですが、いざ結ぶとなると、ぎゅっと締めるのがむずかしい。
歩いているうちに、帯がちょっとずつ下にずり落ちてしまうのが悩みの種で、鏡を見て気づいた時にはちょいちょい直しています。

この日は盆踊りということで、動き回ってもぜったいに緩まないように、ミンサー帯を選びました。
綿織物であるミンサー帯はよく締まるので、輪踊りに入って楽しんだ後も、1ミリもずり落ちることなく、まったく緩んでいませんでした。
これはわたしの帯結びの技術力が向上したというより、締めやすく、ずれにくいミンサー帯のおかげですね。

増上寺の安国殿

地蔵尊盆踊り


増上寺の背景に、東京タワーがそびえ立っています。
古いものと新しいものが一緒にある、東京らしい光景ですね。
我が家からは東京スカイツリーのほうが近いので、じつはこれまで一度も東京タワーに行ったことがありませんでした。
せっかくここまで来たので、増上寺から足を伸ばして、東京タワーも見て回りました。

盆踊りでは、「ドラえもん音頭」などのポピュラーな唄だけでなく、「かざぐるま」や「お地蔵さん」という増上寺オリジナルの盆踊り唄が流れていました。

増上寺の千躰子育地蔵尊

「お地蔵さん」や「かざぐるま」という増上寺オリジナルソングがある通り、増上寺の境内には、赤いニット帽をかぶり、赤いエプロンをかけ、風車を持ったお地蔵さんが約1300体も安置されています。
地元の人々の、子どもの成長と安全を願う思いや、水子の供養の祈りが伝わってくる場所です。

わたしたちも見よう見まねで踊りの輪に加わり、「お地蔵さん」では両隣と手をつないで踊る振り付けがあって、わたしの右隣りは夫、左隣は外国人の若い女性でした。
海外からの観光客なのか、日本にお住まいのかたなのかは分かりませんが、とても気持ちのよい笑顔で楽しそうに踊っておられて、こうやってみんなで楽しむのが盆踊りなのだなとしみじみ感じました。

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