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250文字の短編小説

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#250字小説

雪

「初雪だ。まさか君と見るのが今年初だなんて。」

「人生何があるか分かりませんね。」

少しの沈黙。
余計なことを喋ってしまった後悔。
甘ったるい香水の匂いが
今になって車内に充満する。

あ。香水のチョイス間違えちゃったな。

「ここまでで大丈夫です。ありがとうございます。」

「気をつけて帰ってね。おやすみ。」

緊張から解放したとともに
子どもっぽくなかったかなと
今までの数時間を振り返って

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雨の日

雨の日

雨が降る前の土の匂いが好き。
草木の匂いも好き。

雨の降り始めの匂いって何て言うか知ってる?
「ペトリコール」っていって
ギリシャ語で「石のエッセンス」を意味するんだよ。

そう教えてもらってから
雨の日もなんだか悪くないなって思ったよ。
むしろ雨の日がちょっと好きになった。

でも雨が上がった匂いは嫌い。

だって雨が上がったら
またどこかに行っちゃうでしょ。
また1人でふらっと
私の前からい

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