前向きな寂しさ
朝晩の空気が涼しくまろやかになった。
少しずつ、少しずつ暗くなるのが早くなってきた。
甲子園では、大阪桐蔭高校が史上初、2度目の春夏連覇を成し遂げた。
もうすぐ夏が終わる。
甲子園の閉会式をみて「このおっさん話長いな」なんて毒づきながら、寂しさに気づかない振りをする。
毎年この頃になると、寂しい、という感情があふれ出す。「またひとつの季節が終わってしまった」という、終わりを惜しむ気持ち。
でも、それはやがてすっきりとした純粋な気持ちに変わっていく。
たぶん、甲子園で真っ黒になって全力を出し切る選手たちを応援していると、心の中の錆びや澱(おり)がはがされてしまうからだと思う。
大人になってからは、日常生活で心を大きく動かすことはあまりない。(初めて行ったご飯屋さんがとても美味しかった、とか小さな喜びはたくさんあるけれど)学生時代のように何かで一喜一憂しないし、喜び過ぎず、アクシデントにも動じない。
そんな私の心を、ぐらぐらと揺さぶるのが甲子園だ。試合を見ては泣き、インタビューを見ては泣き、この夏、何度泣いたか分からない。
人が全力で頑張る姿は、間違いなく人の心を動かす。上手い選手、活躍している選手だけじゃない。私が今大会で最も心を動かされたのは、大阪桐蔭の柿木投手と中川主将だった。
昨年の99回大会。勝利を確信したプレーで最後のアウトを取れず、直後に決勝打を打たれて3回戦敗退。そのときの投手が柿木投手で、一塁手が中川選手だ。
私が今大会で大阪桐蔭を応援したのは、この2人がいたから。技術ももちろん見ていて惚れ惚れする素晴らしさだが、心の強さが違う。柿木投手は、ランナーを背負っても崩れることがなかった。ピンチでも自分を見失わない心の強さがあった。
中川選手は、打撃が不調だったという。でも、乗り越えなければならない3回戦、苦しい場面で打点を挙げたのは中川選手だった。
昨年負けたのは2人だけのせいではないのに、本人たちは「自分のせいだ」と思い続けてきたと思う。だから、その2人が報われて本当に本当に良かったと思う。
ここまで心を動かされたら、後に残るのはすっきりとした前向きな気持ちだ。
次は私の番。
2人の感じた重圧や、積み重ねてきた努力、努力が実った喜びを想像すると、「すごい」という思いとともに、「羨ましい」という気持ちも生まれてくるのだ。
だからこその、「前向きな」寂しさ。
さあ、この前向きな寂しさを原動力にして、この秋、また新たな挑戦をしよう。
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