水曜日の本棚#21 物語のなかとそと
けやき通りを散歩した日の常で、ブックスキューブリックに寄って帰った。寄ったらもちろん手ぶらで出てこれるわけがなく、わたしは3冊、夫は1冊を購入して家路に着く。
少し迷ったけど、手にとったのが江國さん(昔から読みすぎてて、なんか知り合いみたいにこう呼んでしまう)の散文集だ。
なぜ迷ったかというと、以前ほど「彼女の新作を見かけたら絶対に買う」ノリじゃなくなってしまったのと、比較的最近買った新作長編が途中で読めなくなってしまったから−10代の女の子2人がアメリカで旅する物語。よく知らない男の子について行く場面で「ダメだよ、そんな簡単について行ったら!犯罪巻き込まれるし!!」とか思っちゃってダメだった−。
家族が寝静まった後、温かいジンジャーレモンティーを手にページをめくりながら、「この感じ、なつかしいな」とじんわり思う。昔大好きだったひとと久しぶりに再会して、いまは他に好きなひとがいるけれど、やっぱりいまも少し心は残ってる、そんな感じ。
たとえば「読書ノート」のなかのこんな一節、
世のなかの、善いもの、美しいものが全て書きつけられている本を一冊あだけ知っている。(中略)ここには「夕暮れのあそび」も「イチジク」も、「自由」も「恋びと」も「子どもと水」も、「パン」も「友情」も「裏庭の木」もある。「井戸」も「アンズの実」も「夏」も「小川」も、「日曜日」も「あらし」も「ブドウのとり入れ」もある。「月」もあるし「よろこび」もある。「幼い女の子」も「十月の午後」も、「古い墓地」も「驚き」も「清らかな夜」も。(後略)
−「物語のなかとそと 江國香織散文集」 江國香織
こんなのを読んでしまえば、それはやっぱり嬉しくなって、夜更けまでページをめくる手を止められないのだった。
Thank you for reading!