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ワーケーションとか言うけれど

最近、ワーケーションを推し進めようという動きがある。
できるなら、いいんじゃないかな。 
かくいう私、もう15年も前からワーケーションを実践していた。

海外出張が主な業務だった私は、一か月ほどの滞在から帰国すると、日本では報告書をまとめる作業が待っていた。待っているのは報告書の〆切だけではない。日本で留守番していた母は、娘が帰国するといくつもの旅行パンフレットをテーブルに広げ「ここどうかな?」と言うのである。高齢になり、一人ではなかなか出かけられないため、私が連れて行ってくれるのをいつも楽しみに待っていた。

母は足が悪い。
杖を突けば歩けるが、ツアーであちこち回るのは他のツアー客についていけないため厳しい。だから、自分のペースで一緒に歩き、休み、温泉に浸かってくれる娘が必要なのである。

私はいつもパソコンを持って行く。
携帯のWi-Fiも持って行く。
15年前は、まだ温泉宿にインターネットは引かれていなかったし、山奥だとWi-Fiの接続は難しかった。でも、通信できなくても、パソコンがあればレポートは書き進むことができた。
当時は年間6回、合計半年くらい海外出張があった。帰国のたびに母を連れての温泉ワーケーションである。だいたい同じ宿に3連泊とか、長いときは5連泊。土日を避けて安い時期を狙っての滞在型が多かった。

空気のいい大自然の中、母の散歩に付き合い、温泉に付き合い、その隙間時間に仕事をする。
窓の外の緑を眺めながら、海を眺めながら、私は色々なところで仕事をした。もっとも、海外でもホテルのプールサイドやカフェで仕事をしていたから、場所も時間も選ばない。ただ、パソコンさえあれば何とか仕事ができたのである。

恵まれていたなぁと思う。
ワーケーション、うん、悪くないよ、と思う。
子供連れの家族とワーケーションならそう簡単に集中できる時間は作れないかもしれない。せっかくなら仕事のことはすっきり忘れて休暇を楽しみたいと思うかもしれない。
でも、パソコンを持っているだけで、時々仕事ができるので、その方が気持ちは落ち着く。時には、パソコンを起動しない旅があったとしても、その時はそれでもいい。パソコンはお守りみたいなものであった。パソコンが側ないことの方が不安だった。

今、コロナ禍で、全ての海外業務は中止になってしまった。
ワーケーションなんて優雅なことは言っていられない状況である。
個人事業主としてリスクを取って仕事をするということは、こういう事態も自己責任なのだろうか(苦笑)。まさか世界中の人の流れが止まってしまうとは思わなかった。

貯金を取り崩しつつ、日本で生活。
温泉にも行けず、登山もできず、ワーケーションどころではない。
せめて、梅雨はそろそろ終わってくれ。

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