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通勤が辛くて…… #6

コロナ禍で在宅勤務になった人たちの中に、もう通勤したくなくなった、と言う人がいる。ゴールデンウイーク明けの鬱みたいな感じだろう。満員電車が地獄に思えるのもよくわかる。

私は何度か転職をしているが、主な原因は通勤時間だった。
一時間近く吊革にぶら下がって会社に移動するのが苦痛で、30分で行ける会社に転職し、さらには正社員を辞めてテレワークの契約社員になった。もう15年近く前の話だ。

国際開発コンサルタントは、管理職でなければ会社に行かなくてもできる仕事だ。その代わり、プロジェクトが入れば海外に飛ぶ。成果さえ出せば、どこにいたっていい。
そして副業作家として活動を始めたのもその頃だった。通勤時間を創作活動に充てることができた。

でも、全部テレワークというわけにはいかないし、副業だって、主となる業務がきちんとできなければ問題がある。その辺のバランス感覚が欠けていると、生活が乱れて仕事のミスも多くなる。自己コントロールが苦手な人には向かないかもしれない。
主となる雇用先には気を使い、さぼっているとか、ないがしろにしているとか思われないようにふるまわなくてはならない。空気を読むというのは日本独特の風土で、そういう器用さは小賢しいが、テレワークに必要なスキルのひとつだった。成果さえ出せば何でもあり、というわけにはいかないのが日本社会である。

成果主義のテレワークに必要なのは集中力だと思う。
メリハリのある仕事をすること。緩急のある働き方で、締め切りを逆算。忙しいときは徹夜もいとわず、でも、時間があるときは昼間からジムに行く。やらなくてはいけないときにスイッチを入れる、そのスイッチコントロールが大切だ。

でも、やっぱり「現場」が重要。
最近ではインターネットで多くの情報を得ることができるが、それでも現場が大切だと思う。かつては「この省庁の組織はどうなっていますか?」と対面で聞きながら、目の前で組織図をノートに書いて確認していた。直接行って聞かないと何もわからなかった。今は、どんな国の省庁でもインターネットで組織の紹介をしているし、企業もネット情報を公開している。ネット環境さえあれば多くの作業は在宅でできる。それどころか、途上国に行くとネット環境が悪く、日本でダウンロードする必要がある。インドのアンダマン島で仕事をした時も、情報統計局で話を聞いてサイトの場所を教えてもらったのに現地事務所ではダウンロードができず、帰国してからのダウンロード、となった(苦笑)。
それでも、やはり調査は現地に行くのは不可欠だと思っている。貧困率など多くの指標がネットでわかっても、現場感覚はつかめない。目で見て、耳で聞いて、風を感じて臭いをかぐ。周辺状況の理解によって、その数字が示す意味もわかるというものだ。飛行機で15時間かかっても、行く意味は大きい。(あんまり遠いとげんなりだけど)

さて、東京の通勤事情。
1日往復2時間の通勤を週休二日で年間250日間行うと、500時間となる。それを24時間で割ると、約20日間を費やしていることになる。22歳から62歳まで40年間続けたら、800日か……。睡眠時間6時間を差し引けば、軽く1000日を超える。約3年だな。それを「たった3年」と思うか「3年も!」と思うかは人それぞれ。
比叡山には千日回峰行というのがあり、975日間の修行がある。通勤ラッシュの往復も、人生の修行だと思えばいいのだろうか。

個人的な意見だが、テレワークを混ぜれば3日通勤、2日在勤でも十分成り立つ業種は多い。柔軟な組み合わせをすればいいと思う。
エッセンシャルワーカーについては、もっと給与を上げられるよう財政支援をして、週休3日が当たり前としたらどうか。財政難なら一律消費税ではなく格差是正の政策を取ればいい。政治家が世襲のお金持ちばかりだから無理なのかな……無理とは言いたくないな……。
昔は土木関連も時給が高く、半年日本で働いて、残りの半年はのんびり暮らすという人に海外で結構会った。人材不足を単純に安い外国の労働者で埋めるだけでなく、給与さえ高くて休みが多いなら短期集中で頑張ろうという人たちが増えるかもしれない。ハードな職場で3日間頑張って、残りの4日は副業で創作、というなら希望者が増える可能性はある。

働き方は多様でいいし、人生の楽しみ方も人それぞれ。
千日回峰行もいいけど、他の選択肢がある方がもっといい。

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*写真はアンダマン島の漁港調査時に自分で撮影したものです。
*小説も絶賛発売中です。 


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