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《First編》[1]2004秋④ホストのキャッチ

少し酔いも冷め、居酒屋を後にする。時間は午前1時過ぎだ。
二人でセントラルに出た瞬間、
「ねぇねぇ」
「二人でこれからどこいくの?一緒に飲まない?」
金髪のギャル男風の男の子と爽やか明るめ茶髪の男の子、どちらもスーツ姿の二人が声をかけてきた。年は同じくらいかな。
「行こうよー。初回なら安くするからさ。」
無視してみても絶えず話しかけてきた。
「えー」と沙耶が渋る。
「いくら?かっこいい人いる?」
慣れた口調で彼女は話し出す。
「かっこいい人いっぱいいるよ。俺以外で。君達二人共可愛いから、フリータイム1人5000円だけど、2000円でいいよ。いや、1000円は俺達が出すから1000円にするよ。どう?」金髪の男は勝手に決めていっている。
「ハウスボトル飲み放題で割り物も飲み放題にするよ。」
沙耶は私に「どうする?」と耳打ちした。
「沙耶に任せる」と言って任せてみた。こんなところでまで私は優柔不断だった。
店の名前を聞くと沙耶が行った事がない店なので男達に付いて行くことになった。
爽やか系た男は沙耶を気に入ったらしく、沙耶にだけ話しかけ続けている。私の横には何故か金髪のギャル男がいた。女子高、女子大の私は普段あまり男の子と話さないので、人見知りもあり無言で歩いていた。
セントラルを真っ直ぐ抜けて、コマ劇場の右横の道を抜けて右に曲がり風林会館前に出た。区役所通りを左に曲がり、暫くあるいて、バッティングセンターの向かい側辺りの細い路地裏に着いた。
「ここのビルの4階だよ」
二人のホスト達は、エレベーターに先に私達を乗せレディーファストで案内してくれた。6階建てのビルで飲食店がいくつか中に入っている。その中の4階のフロア全体が19:00から01:00の間はパプクラブに、02:00から08:00はホストクラブになっているらしい。
4階に着き、入り口の前を見るとナンバー入りしているホスト達の写真が並べられていた。私達をキャッチした二人の写真はなかった。後々聞いたのだが、まだナンバーに入ってない人や新人はキャッチで女の子を捕まえるように指導されていたようだ。
私の緊張感も最高潮で、ついに異世界に来てしまったと感じていた。

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