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椅子とラオスの夜



免許の更新にきた。
日曜日の試験場は行列。
その横にずらっと並ぶ待合の椅子。

寒色で統一されたその椅子は
1人分に仕切られており、4人分が1ブロックになっている。
最近はあまり見かけなくなったが、
駅やバス停の待合の椅子の定番。

古びた施設内の風景と
整然とならぶその椅子が
ラオスの記憶を呼び起こす。

あれはバックパッカーには定番スポット、
のどかな田舎町、バンビエンのバスターミナル。

南の町、パクセーを訪れるため
夜行バスを待っていた。

そのバスターミナルにも
試験場と同じ椅子が並んでいた。
夜になると暑さはましになるものの
蒸し蒸しとした、べっとりする夜。

20キロのバックパックを背負い歩いてきた私はそれなりに疲れ果て
その椅子にバサっと荷物の塊を置き
椅子に腰掛ける。
一緒に旅をしていた彼女も同じように腰掛け、
「あー、つかれた。暑い!」と一言。
うん、同感。

併設の、レストランとは呼べない
屋台風の食堂で、夕食をとることにする。
品数は多くないメニューから、私たちが選んだのは、香草が添えられた淡白な味のヌードル。
テーブルに置かれている調味料を、自由に投入し、自分好みの味に整える。


20歳の私たちは
あっという間にそれを平げ、
その一食では満たされず、
「まだ何か食べたいねんけどー!バスで食べる夜食でも探そ」
と食堂横の売店に吸い寄せられる。

簡易なプラスチック袋に
どさっと入れられた、手作りとみられるポテチ風のスナックを2人で1つ購入。
(既製品より安かったから笑)

私はドリンク棚にビタミルクを発見し
思わずこちらも購入。
(フィリピンでよく飲んでた乳飲料?。コーヒーミルクみたいな風味)

バスが来るまでの小1時間で
ペチャクチャとおしゃべりしながら
あの椅子に腰掛け。
結局夜食用に買ったポテチとビタミルクを完食。

やっとバスが来た頃には
お腹も満たされ、夜行バスでぐっすり眠った私たちだった。

特に大きな出来事や事件が起こった訳ではない、
あのなんにもない旅の一コマが
懐かしく愛おしいコロナ禍の今。
今度旅に出る時は
あの頃と180度違う視点で物事を見るんだろう。


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