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見きり発しゃ文庫『未完』

#2 夢(仮)と現実(フリ)と、

夢に賞味期限はあるのだろうか…

日曜日の朝、重い体を起こし、
ゆっくり伸びをする。
カーテンから溢れる朝日を浴びながら
ふと、そんなことを考えた。

「痛!?」
ベットから出た瞬間に、 
左足で鉛筆を踏んでしまい、思わず声を上げた。
部屋には、
殴り書きされた作詞用紙が、
数枚散らばっている。
昨夜、歌詞の冒頭を思いつき、
書き始めたものの、
10分後には筆が止まり、
自分の才能のなさを思い知って、
もう何もかも嫌になって、
机の上に置いてあったものをぶちまけ、
そして、ベッドに突っ伏した。

散らばったプリントを1枚ずつ
丁寧に拾いながら、考える。

才能を測れる機械があればいいのに…
個人の才能が可視化でき、
個人に適切な人生ルートを提案してくれる
そんな機械が出来ればいいのに…
「君には、アーティストの才能なんてない」
そう誰かが、断言してくれれば、
私は歌手という夢をスパッと断ち切って、
きっと、次に向かって頑張れる。

自分に宿りうるかもしれない才能を
信じる自分に、溺れたくない。
もう、泳ぐのは疲れた。

集め終えた紙くずを
捨てようとして、手が止まる。

きっと、私の心は、
心の奥底で気づかないフリをしている声は、
まだ大人になりたくない。
わかったフリをして、夢を諦めたフリをして
業務の忙しさで退屈な日々をごまかすのは嫌だ。
テレビに映る新人歌手が、
自分よりも年下なことで落ち込みたくない。
と、小さく叫んでいる。

今日は、日曜日。
幸い、予定もない。
もう少しだけ、
自分の夢に向き合ってもいいだろうか。
明日からまた、OL頑張るから。
もう少し、自分の中のワクワクを信じて、
歌詞を書き進める自分に酔ってもいいだろうか。


現実なんて、自分が死ぬ時に、
「死」という現実だけを見ればいい。


そんなキザなセリフを、
いつか歓声で沸くドームの中心で叫びたい。



拙い文章ですが、
最後まで、読んでくださって、
本当に本当にありがとうございます!

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