見出し画像

中3のあの時の自分に今言えること。

あの時どうして
あんなことしたんだろうって思う
思い出がある。

一瞬にして
色んな感情がよぎって
判断を下したこと。

中学3年のクラス対抗スポーツ大会のとき、
私は800メートル走に出場することになった。
私はもともと陸上では短距離走の担当で、
100、200、リレーの選手として駆り出されていた。

人数の少ない中学ではにわか陸上部や、
にわか水泳部、にわかスキー部があった。
とくに私はスポーツがすごい得意だと思っていなかったが、にわか部すべてからお声がかかっていた。
すべてのにわか部に在籍するスポーツ万能な子もいた。
やる気のない中学生だった私は、水泳とスキーは断り陸上部には参加した。

Aさんはそのにわか陸上部で長距離の選手だった。
私は短距離。
Aさんは長距離。
練習はそれぞれ別メニューで、担当する先生も別の先生だった。
Aさんは負けず嫌いで努力家で、長距離担当のコワオモテの先生からいつもしごかれていた。

Aさんとは卓球部で一緒に頑張ってきた仲だった。
中学に入学する前から、一緒に卓球部に入ろうと約束していた。
私は本当はバレーボールがやりたかったが、Aさんと約束もしていたし、バレー部に入るメンツをみて、やっぱりやめたとあきらめて、先輩が少なくてすぐに試合に出れそうな卓球部に予定どおり入部した。

2年生になり卓球部の先輩が引退した後、
Aさんは部長となった。
私は支える立場で、協力して、
ライバルでありながら仲間として
部活帰りの分かれ道のところで
日が暮れて真っ暗になるまで
作戦や練習方法を話し合った。
3年の夏の大会までそうやって一緒に過ごした。

部活を引退後、あることをきっかけにAさんと絶交状態となった。
すれ違っても挨拶しない。
目も合わせない。
あんなに毎日一緒にいたのに。
クラスが別だったのは救いだった。
一言も話すことのない日々が続いていた。

そんな状況のまま、
秋にスポーツ大会が開催された。
3年生は中学最後のスポーツ大会。
クラス対抗の行事もこれが最後。
これが終わったら受験に集中するだけ。
クラスの団結も深まっていた。

800メートル走は正直やりたくなかった。
短距離の選手だったし、
長距離は苦手で好きではなかった。
クラスの誰も走ろうとしないから担当しただけだった。

800メートル走はスポーツ大会の大詰めの時間帯で行われた。
クラス対抗で他の種目での獲得ポイントの途中経過も発表され、クラスからの応援は盛り上がっていた。

競技が始まった。
私は1年から3年までエントリーした全員が一斉スタートする中で、Aさんがいるのを見つけた。

小さな校庭の200mトラックで
4周走る駆け引きが始まった。

その日なぜか私の体は軽く、
いつのまにか先頭を走っていた。
クラスのみんなからの応援が聞こえた。
頭の中には何もなくて、
ただ体にまかせて走っていた。

最後のトラックでの最後のカーブ。
あとは直線で走り終われるところで
長距離走担当のあのコワオモテの先生が立っていた。
先頭で通過する私のうしろに目線があるのがわかった。
感覚的には3メートルは離れていた。
私の後ろを走る子に大声で声をかけた。

「A!ファイト!まだ追いつけるぞ!」

私の後ろを走っていたのはAさんだった。

たぶんあのまま体にまかせて走り抜ければ
私は1位でゴールテープを切っていた。
クラスのみんなからの応援を聞きながら
私はゴール直前の直線で
思いっきり減速した。

そしてAさんが1位になった。

私は2位でゴールした。

コワオモテの先生は大喜びでAさんに駆け寄り
よくやった頑張ったなとAさんをねぎらっていた。


あの時どうして減速したんだろう。

今になってもその時の感情と向き合おうとしている。

1位になればクラスのために貢献できたはず。
でもAさんに1位を譲ったのだ。

Aさんに1位になってほしかったのか。
私が1位になる資格なんてないと思ったのか。
応援する先生の気持ちを尊重したかったのか。
これで1位になって苦手な長距離も実はできたんじゃんと思われたくなかったのか。
絶交状態は私のせいだと勝手に思って、
そのつぐないのために譲ったのか。
Aさんの努力をカタチにしてみんなの前で証明してもらいたかったのか。
やる気のない私がたまたま今日だけ1位なんておこがましいと思ったのか。

私の中であの時、
何を大切にしたかったんだろう。

私が2位になった結果、
Aさんのクラスが優勝した。

クラスのみんなに申し訳なかったけど
自分の何かしらの感情に
嘘をつけなかった結果だから。

多分私の中で

一生懸命やっても良い結果を出しても、
オッケーが出ない
誰かが傷つく

という思い込みがあったのかもしれない。

小さな世界で生きていた子供時代に
大人にも気を使って生きていたから
自分に自信がなくて
誰かがいい思いをするなら
どうぞってすぐに譲って
それで自分を成り立たせていたのかもしれない。

Aさんと正々堂々と戦っていないことに
後悔はない。
失礼なことをしたのかもしれない。
バカになんかしていないけど
あのときの自分は
Aさんに勝てるような自分ではなかった。

努力して先生にもその努力は認められていて
私にはそんなカケラもなくて
Aさんに勝ってはいけないと思ってしまった。

今大人になって、
あの時の自分を抱きしめてあげたい。

コワオモテの先生みたいに
よくやった
もう大丈夫
気を使うことなんてないよ
自分がそうしたかったんだから
それで良かったんだよ
その時の感情は
そのままそこに置いておけばいいよ
そこに置いて大切にしておけばいい
そんなこともあったなぁって
同級生に話すこともないし
Aさんに打ち明けることもない
謝ることもない
そーっとしておいていいんだよ
それが自分なんだから。

もう大丈夫だから。
気にすることもない。
自分を責めることもない。
自分がカッコ悪いなんて思わなくていい。
それがその時の自分だったんだって
ただそう思えばいい。

中3のあの時の自分へ。









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?