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無垢のイスが黒くなった日

涙ぐむわたしと、スポンジをこするむすめ。何があったのか、少しお付き合いくださいね。


我が家には大きめのダイニングテーブルがある。無垢で触りごごちがなめらか。新婚だったころ、一目惚れをしてかったもの。少し背伸びをしてね。


朝も夜も基本ひとりでむすめを見ているわたし。たまに土日もひとりのこともある。ココロがいっぱいいっぱい。呼吸をしていない。気づいた時は、無垢のテーブルに触れている。大丈夫大丈夫。気持ちをおちつかせるため。



いつものように洗濯を畳んでいると、目に入るよう椅子についた黒い線。たくさんね。娘の手にはお気に入りのボールペン。


「じゃーん!」
披露するむすめを横目に、ココロがしぼむわたし。


きっとたかがイスで?思う人もいるだろう。なかなか会えない主人と最初に買った大きな家具。何度も見に行って決めたもの。当時の思い出が頭を駆け巡る。


叱ることはしなかった。しない選択をした。純粋に書きたかっただけ。椅子に書いちゃいけないことを知らなかった。むすめの気持ちをわかる。わたしも伝えていなかった。


ペンさえ持たせなければ。
先に注意をしておけば。


時間は戻せない。


「きえるかな」

行き場のないモヤモヤが心におさまらなかった。顔がくしゃくしゃになって振り絞った言葉。


何かを察したむすめ。タオルを持ってきて一生懸命イスをふく。やっぱり取れない。今度はスポンジをふいてみる。やっぱり取れない。


最後にわたしのところに、ぎゅっとハグをしにきてくれた。


おどろくくらい、ココロが温かくなった。落書きしたのもむすめ。落書きを拭いたのもむすめ。落ち込むわたしも慰めるのもむすめ。



「きっと知らなかったんだね。次は紙にお絵描きしようね。イスさんは、ママの大切な思い出だから、落書きされると悲しい気持ちになるんだ。今度からは一緒に絵を紙に描こうね。」


2さいでも、むすめにも言い分はある。
ママにも、言い分はある。


お互いが思いやりを持って手を差し伸べていきたい。先が尖った言葉が出てきそうなときは、一度その場を離れてみる。深呼吸してみる。



わたしたちが向き合うのは、自分とのココロ。こどもたちと向き合うのと同じくらいに大切にしていきたい。

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