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『すずめの戸締まり』 新海誠さんが描きたかった世界 ”地球と神と生” に関する感想を書いてみる

こんにちは、みいです。
今回は、「君の名は」でお馴染みの新海誠さんの新作、『すずめの戸締まり』を観てきました!大枠から細部まで、全てが必然であるストーリーに脱帽でした。とても感動したので、考察や感想を書いていこうと思います。あくまでシーンごとの私の解釈です!

ここから先はネタバレも含みますので、避けたい方はご注意ください!🥺(超ニッチなところを言ってるので観てないとよくわからないとは思います笑)

『すずめの戸締まり』 パラレルに進む二つのストーリー 

まず、『すずめの戸締まり』は、以下2つの物語が「扉」を介して交わりながら、パラレルに進んでいきます。

1. 主人公の鈴芽(すずめ)と草太の2人が紡ぐ、ドラマ×ファンタジー×アクション×ラブロマンスストーリー(的な感じ)
2. 新海誠によって描かれる世界観 ”地球と神と生”

※「扉」:災害など様々な理由で人が住まなくなった街や建物の扉に現れる特異点のような場所。常世(この世の裏側)と繋がっている。

今回、二人が紡ぐ素敵なドラマストーリーに、私自身、大号泣をしまして、前者の1番に関してもたくさん書きたいのですが、感情に任せた浅いコメントが増えてしまいそうだと思っているので、

2番の要素、新海誠さんはこれを描きたかったんじゃないかなと感じたところ、”地球と神と生”の考察やグッときた点、気づきを主に書いていこうと思います。

1.人が離れた被災地をみて ”こんないいところあったんだ” と言った芹沢

典型的なシティボーイ芹沢

草太を探すために車で北上するすずめと芹沢と環(たまき)さん。
その途中で立ち寄った海辺でのシーン。

「こんないいところがあったんだなあ」
「え?」

物語の中盤にサラッと何気なく出てきたこのシーンですが、
個人的にはこの一言が「すずめの戸締まり」の全てであると感じました。
「扉の反応」があったことから、その場所は被災で人が住み着かなくなった場所、そして福島の周辺(津波の被害)だということが読み取れますが、

そこでの芹沢の目には、そこはただの海と草原にしか見えません。

”時間が経つと、人はそこでどんなことがあったかなんて忘れてしまう。”
そんな現実を叩きつけたシーンのように思え、胸がキュッとした気持ちになりました。

2.「まだ死にたくない」と言った草太と、「死んでもいい」と言った鈴芽

ハウルにしか見えへん

幼少期に「津波」によって母の死に触れたすずめはとても不安定で、死を全く恐れていない描写がいくつもありました。
反対に、草太ははっきりと「まだ、死にたくない。生きていたい」と何度も繰り返し叫びます。

災害に触れた経験の有無による死生観の違い、すずめと草太のコントラストが印象的でした。

また、災害に加えて、「東京」というものも象徴的に描いていたように感じます。例えば、東京で扉が開いているのに、道ゆく人が何事もなく通り過ぎていく情景や、草太や芹沢(東京の大学生)もその一つです。

地震を引き起こすミミズは全国で出没しうる(いつでも、どこでも、死というものは隣にある)というメッセージは、最後に草太が常世でミミズを封印する際にも唱えるなど様々なシーンで描かれていますが、

草太の死にたくない、という言動は、特に東京という文明に囲まれた場所では死を意識しがたいものとして描かれていたように感じました。

3.愛に飢えた無垢で無邪気な神、ダイジン

ダイジンたんかわいい・・・

神の栄養源とはなにか?
それは、その神の存在を”人に忘れられず、人に大切にされる”ということなのではないでしょうか。

『おれのこと、すき?』

これをすずめに仕切りに聞いたのが、神であり、みみずを封印するための要石だった「ダイジン」でした。

「かわいい!うちで一緒に住もうよ」
「いいよ」

すずめが自分のことを必要としてくれるときは、まるまると毛並みが良くなり、心から嬉しそうに振る舞うダイジン。すずめが好き。すずめと一緒にいたい一心に、”要石”という役目を草太に渡し、草太をみみずに射させようとした。

その本質は神の、人に愛されたい、忘れないでほしいというものだったのではないかと感じます。日本にある”八百万の神”すべてに神は宿るという考え方。それは、街も、山も、モノも同じで、人がその街の存在を忘れ始めると開いてしまう「扉」とも同様。

すずめと出会った時の右大臣はボロボロの姿だったのは、ダイジンという神自身が、人による信仰が薄れていたことの象徴であり、新海誠さんが描きたかった世界だと感じています。左大臣、右大臣は神社にある銅像だそうです。

ナチュラルに感動して大号泣した話

めっちゃ泣きました。とにかくダイジンが切なすぎて、、、、
まえに細田守さんのバケモノの子を観に行った時も号泣しまして。
クマ鉄が剣となった時は、「クマ鉄〜〜〜〜と叫びたい気持ちが全部涙へと変わり、一緒に行った友達二人が興ざめしてしまったくらいに泣いたのですが、今回もダイジンが要石となる姿のときに「ダイジン〜〜〜〜〜〜」と叫びたくなり、その日を思い出しました。本当に切ない。

すずめと草太は、またちゃんと出会えて、よかったです。
今回のすずめの戸締まり、君の名はとつながる描写やカット、世界が多くて、二人がハッピーエンドになるのかならないのかドキドキしていたのですが、ちゃんとハッピーでした。三葉と瀧のように東京ですれ違うのではなく、九州の坂で再開したのも、対比としてよかったです。

たまきとすずめの絡みも良かった。街ごとに様々な出会いがあるのも良かった。草太のおじいちゃんとサダイジンも良かった。東京の四谷とか市ヶ谷あたりの川が扉のスポットになっているのも良かった。絵もすごく綺麗だった。すずめが小さいすずめにかける言葉もすごいよかった。(語彙力)伏線も満載で楽しかった。

新海誠さん、大変すてきな作品をありがとうございました!!!
やはり、新海誠さんの作品は、描きたい世界と、それをコメディやエンタメとして落とし込むところにあると感じています。

言の葉の庭や、秒針センチメートルなど様々な試みのなかでうまれた「君の名は」に続く、天気の子、そしてすずめの戸締まり。それぞれの世界線もつなげてくる作品たち。素敵すぎる。楽しかった。







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