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肌寒くなったから、もういくね


ここに巣などあるはずもない。

君はどこから来てどこへ向かっているんだい。
そんなに急いで
そんなに迷わず
どうして空を飛べるんだい。



いつか幕を閉じる瞬間に、
今日という日は思い出すこともないだろう。
誰かに話すような日でもないだろう。
毎日ドラマティックなことが起きるわけではないのだから。


それならいつも片隅にあるそれはなんなんだい。
なぜずっと心の中にある。
なぜそれでも歩もうとする。
なぜ信じ続ける。


身体を整えてみるくせに、
雑にしてしまうときがある。
心を守りたいくせに、
置いてけぼりにするときがある。

矛盾を肯定しないと叫んでいたはずが、
それを受け入れないことには
この世界は廻らないのだと知った。
人が思わず足を止めて眺める海のことも、
いつからそこに佇んでいるのかもわからない木々のことも、
私は何も知らない。


文字を打つ私の指を這う蟻がいる。
しばらく指と指を渡らせ、
手のひらを確かめるような彼と遊んだ後、
ふと気付く。
あなたが生きるために必要なものは
私の手のひらにはないよと告げ、
足元の芝に還す。
私は何も持ってなどいない。
あなたが何を求め、
どうしたら生きていけるのかも
何も知らない。
カフェオレを一滴こぼしたら喜んでくれただろうか。
彼に喜びなど必要なのだろうか。


どこまでも私都合な言葉しか
持ち合わせていないのだ。


夜空を見上げれば星を探す。
曇りの空を見上げては太陽を探す。
真っ暗な部屋に入ればライトスイッチを探す。

光ばかりを追う私は、
暗闇の中にいることを物語っているようだ。



生後3ヶ月だという犬が近寄って来た。
名を聞くとオーレィだかオーリィだか
初めて出会う名だった。
English?
No,swedish.
まだまだ知らない世界が日常に転がっている。

My name is Miho.I love you.
幸せに生きてね
とさよならを言った。

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