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ワインのレビューアプリ「Vivino」のビジネス拡大(Multi-sided Platform)

私は大のワイン好きなのですが、知識が蓄積されず、もう一度美味しかったワインを買おうと思っても数年前まではどんな名前のワインだったか分からなくて、次に同じものを買うということが出来ないでいました。

そこで出会ったアプリが「Vivino」。ワイン通の方であれば、すでにご存じのアプリだと思いますが、ワインのエチケット(ラベル)の写真を撮ると、瞬時にそのワインのユーザーレビューや産地、ブドウの種類、価格(これは世界の標準価格なので、日本で買うと表示価格よりかなり高い場合が多いです)などが表れて、自分で点数をつけたり、感想メモを書いたりが出来るので、次に買うときに非常に便利なのです。

ビジネススクールで習ったフレームワークで、Two-sided platform(network)というのがあり、例えば、メルカリとかが良い例ですね。

例で言うと、片側(One-side)には、使わなくなった子供服を売りたい売り手がいて、もうひとつの側には子供服を中古で良いので安く買いたいという人がいて、その2者(Two-sides)がマッチして取引が成立するプラットフォームのことをTwo-sided platformと言います。

今回のVivinoで言うと、今日飲むワインを探している人がそのワインを飲んで感想を書いてくれた人のレビューを読んで購入するかを決めるから、ある意味でTwo-sided platformと言えるのかなと思います。しかも、良いプラットフォームはそのsideがスイッチ(Side-switching)しやすいというところに、ポジティブなネットワーク効果(片方が増えると、もう片方も増える)が生まれます。

このVivinoですが、2010年にデンマークで起業した会社で、現在はカリフォルニアに本社があるようですが、スタートアップ当初は世界中にいくつあるか数えきれないワインを地道に登録していくというところから始まっていたようですね。投資家の資金が入るにつれて、テクノロジーが進化していき、今では、ユーザーが過去に飲んだワインの履歴から、買おうとしているワインが何%のマッチ度が出てきたり、食べようとしている料理に合うワインは何かでワインが探せたりと、パーソナライゼーションのアルゴリズムも組み込まれて、非常に利便性も高くなっています。そして、今年2021年5月に1億5500万ドル(約164億円)を調達したというのが日本でもニュースになっていました。

この記事の中にもありますが、やはりスタートアップ当初はかなり地道な作業が大変だったようですね。

「商用化される前の時点で直面した最も高いハードルは、やはりデータの構築作業でした」とザチャリアッセン氏。「集計されたデータはどこにもなかったため、まったくゼロの状態からデータを作り上げる必要がありました。ワインボトルの写真を撮って、誰かがデータを入力するという作業を毎日繰り返しました。今では15億枚のワインラベルの写真がありますが、この大量のデータを構造化された方法で構築するためには10年の歳月がかかったわけです」。

そして、現在では、ワイナリーや取り扱い業者とパートナーシップを組んで、マーケットプレイスの機能が付いて、そのワインをVivinoのアプリ経由で購入することができるようになっています(日本ではまだこのサービスは始まっていないようですが、じきに始まるのではないでしょうか)。

フレームワークの話に戻るのですが、Vivinoはマーケットプレイスを始めることによって、またひとつSideが増えるわけです。それがMulti-sided platformと呼ばれるものです。このSideがどんどん増えていき、ビジネスが拡大していくと、Ecosystemが作り上げられ、強固な会社が出来上がるということです。Amazonが良い例ですね。最初は本だけを扱っていた会社が、取り扱う商材が増え、更にはAWS(Amazon Web Service)のようなクラウドのビジネスだったり、Amazon Advertisingのように広告ビジネスも始めたりとSideが広がっていった結果、Ecosystemが出来あがるということです。

VivinoがAmazonのようになれるかというと、それは分かりませんが、Vivinoに対抗できるアプリは他にないので、ワインやその周辺に徐々にSideを広げていくことで、ますますの成長が見込めるのではないでしょうか。VivinoがIPOする日も意外と近いかもしれませんね。今後も注目していきたいと思います。

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