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してもらったことを返していくのが人生だ

私の母はよく東京へ遊びにくる。地元の群馬から。
だいたい父と一緒に車で来るのだけど、前に一人で高速バスに乗ってきたことがあった。

東京は初めてではないし問題無いだろうと思うものの、到着する朝にはバス停まで迎えに行って帰りも見送って別れた。

バスの窓越しに手を振る母を見ながら湧き上がってきた気持ち。
「ああ、これって今まで私がしてもらったことだ」

初めて保育園に行った日、お母さんはどんな気持ちで私を見送ったんだろう。大泣きして困らせたりしたかもしれない。

5歳で習い始めたピアノ。それから13年間、毎週当たり前のように送り迎えをしてくれた。途中からは塾の送迎も増えたりして。車に乗るなり「お腹空いた!」という私にいつもおやつを準備してくれてた。姉弟たちには内緒で食べるその味は人生で一番美味しい時間だったのかもしれない。

見送り迎え、また見送り。大学で家を出て、結婚してからだっていつだって笑って迎えてくれる。

たくさんたくさん、与えてもらったものを、これから私は返していけるのかな。どうか少しでも返せる時間が長くありますように。

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