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お茶室の「一期一会」

お茶の稽古。

この冬最後の筒茶碗。

筒茶碗は、ふつうの抹茶茶碗よりも縦に長くてお茶が冷めにくいので、寒い季節に使う。

茶碗を拭く「茶巾」の扱いが変わるので少し難しい。

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筒茶碗を見ると、思い出すお茶の先輩がいる。

お仕事柄、指が長く手先が器用な方で、筒茶碗のお点前がとても美しかった。

コロナ禍で会えなくなってしまったけれど、お元気かなあ。

また一緒にお茶が飲めるかな。

1杯のお茶をゆっくり点てて、いただく時間は当たり前ではない。

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「一期一会」はもともと茶道に由来する言葉で、一般的には「ひとつひとつの出会いを大切に」みたいなニュアンスで使われることが多い。

でも、お茶室にいると、本当はもっと切実な意味が込められていたんじゃないかと思うことがよくある。

利休さんがお茶の道をひらいた戦国時代には、今朝一緒に茶を喫した友が、夕べにはこの世を去っているということも日常だったろう。

今、向かい合ってお茶を飲み、笑って言葉を交わしている友とは、このひとときが今生の別れかもしれない。

だからこそ今、この瞬間は全力で相手と向き合う。

そんな切実さが、お点前の静けさには込められている気がする。

一度しかない今日、目の前にいる人との今を、大切に。

読んでいただきありがとうございます! ほっとひと息つけるお茶のような文章を目指しています。 よかったら、またお越しくださいね。