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クリームつきホットココアください。

Heiße Schokolade mit Sahne bitte!
クリームつきホットココアください。

2016年10月2日。成田空港から12時間のフライトを経て、わたしは約5年ぶりにフランクフルト国際空港に降り立った。ベルリン行きの飛行機を待つ間、わたしはちいさなカフェバーで、はじめてのドイツ語を話したのです。「Heiße Schokolade mit Sahne bitte!(クリームつきホットココアください)」。

すると、店員のトルコ系のお兄さんがカップに注がれたココアが見えなくなるくらい、もりもりとクリームを盛ってよこし(つい盛りすぎて紙ナプキンではみ出たクリームを拭き取ったのを、わたしは見逃さなかった)、思わず口があんぐり開いてしまった。ふと隣りに目をやると、自分の飲みものを待っていたおじさんが、わたしのもりもりココアをじっと見ている。そのおじさんと目が合うと、にやりとして「Zu viel!(多すぎるよね!)」と話しかけてきたので、「Ja, viel!(本当に多いよ!)」と笑い合ったのだった。

日本からの飛行機でひとり、これからはじまる異国の暮らしに不安で押しつぶされそうになっていたわたしは、そのちいさな会話にちょっと救われた気がした。それから現在にいたるまで、クリームつきホットココアを注文するたびに、わたしは静かににやりと、この日のことを思い出すことになる。

※ちなみに「もりもりココア」は、ドイツでは割とスタンダード。

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