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谷桃子バレエ団ガラ公演 感想

谷桃子バレエ団75周年を記念した公演「TMB HISTORY GALA PERFORMANCES」を鑑賞(6月16日 夜公演)。
この興奮が冷めないうちに、レポートを残しておこう。

谷桃子バレエ団は1949年創設と老舗でありながら、バレエを楽しむ人口が年々減少している現代では、なかなかチケットが捌けずにいた。その状況をなんとか打開しようと取り組んでいるのがYouTubeでの密着ドキュメンタリー。昨今のトレンドである“推し活”をバレエ団にうまく持ち込んだ。舞台上ではプロとして軽やかに舞うからこそ、素人には良くも悪くもバレエがどれほど大変なのかピンとこない。実際は体力的にも経済的にもとても過酷で、それでも「バレエが好きだから」と、主役を目指してひたむきに努力する。美しさの裏側にある泥臭さを大っぴらにしたことで、バレエ経験者も、そうでない人も、胸を打たれて“応援に駆けつけている”のが谷桃子バレエ団の現状だ。

創設75周年を記念した本公演では、谷桃子バレエ団の過去と未来を辿るように、古典バレエ作品のハイライトシーンを立て続けに全12作分を上演していく。バレエ初心者にはトライアル感覚でたくさんの作品を楽しめる良い機会でもある。

なんと全公演のチケット即完、谷桃子バレエ団初の追加公演決定という期待値の高さ!
YouTube効果は侮れない…。


バレエ団の紹介はこの辺で終わりにして、ここからはバレエ初心者の私による簡単なレポートを。

🩰上演前から楽しい!バレエ公演の魅力

新国立劇場というだけでテンション上がる

建築家・柳澤孝彦によって設計された新国立劇場。水が張り巡らされていて、まるで都会のオアシス。水の揺らめきを見ているだけで癒される。この時点で𝑭𝒆𝒆𝒍 𝒍𝒊𝒌𝒆 𝒂 𝒔𝒘𝒂𝒏...🦢
新宿の喧騒より初台の静けさの方がよっぽど好きだ。


浮き足立つホワイエ

観客は年齢層幅広く、小学校低学年くらいの子から20代くらいの若年層も多くいた。もちろんさらに上の年齢層もいたのだけど、みんな共通して“いつもよりちょっと綺麗な服”を着ている気がして、それだけでワクワクした。ドレスコードはないけれど、せっかくのバレエだしということで、会社や近所のお買い物に着ていくにはフォーマルすぎるが結婚式のお呼ばれルックに比べるとカジュアル、というちょうど良い塩梅のおめかしをしてきたのかなと思うと、なんだかこっちまでウキウキする。

ホワイエにはずらーっとスタンドフラワーが並んでいて、多くの人がこの日を待ち望んでいたのだと感じる。4月にチケットを取ったことがもう懐かしい……。

ホワイエで飲むソフトドリンク。ただのジンジャーエールなのに、格式高い雰囲気のスタッフから手渡されると、いつもよりちょっと気分が良い(いかんせん私はドリンクバーの人間なので…)。


🩰特に印象深い作品は……

『白鳥の湖』より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ/瀕死の白鳥

谷桃子バレエ団にとって十八番である『白鳥の湖』から2シーンの抜粋。黒鳥は大技とされる32回転を披露。軽快な音楽にあわせて驚異的に回る様は、素人にも凄さが分かりやすい。白鳥の腕のしなやかさ(本当に鳥の羽に見える…!)は言わずもがな。いまにも死にゆく白鳥は高い演技力を求められるが、さすが谷桃子が誇るプリンシパル。文字通り頭のてっぺんから足の爪先まで、白鳥が憑依したかのような圧巻の演技だった。

『イーゴリ公』よりダッタン人の踊り

バレエというよりはハリウッドの大作映画かのような壮大さ。衣装もチュチュスタイルではなく、ベリーダンスのそれに近い。トゥシューズではなくバレエシューズでパワフルに駆け回るダッタンの美女は、蠱惑的な魅力を振り撒いていた。全幕で観たい作品。

『ジゼル』第2幕よりジゼルとアルブレヒトのパ・ド・ドゥ

軽やかさの極致。人間が柳の木、あるいは風のようにふわふわと舞う様に、幻想世界へと誘われる。動きに重さを感じさせないということは、軽々とやってみせることでもあるが、その高度な技術を身につける努力の集積が端々に感じられた。


🩰バレエの好きなところ

一般的に、バレエは無言劇であるが故に敬遠されがちだとされているが、私にとってはむしろそれこそがバレエを好きな理由の一つでもある。無言劇の方が、ある程度は観客側に想像する余白があるから楽しい。

バレエは芸術であり、スポーツでもある。明確な“大技”があり、それが決まると拍手喝采。“大技”の直前はみな固唾を呑んでじっと見入る。その緊張状態も、やっぱり生で観るバレエならではの楽しみだ。


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