小さな村にある、大きな「家族」
ヒンドゥー教では「ティージ」と呼ばれる、女性のためのお祭りが夏に開催される。私がその存在を知ったのは、ホームスティさせてもらった村で、ちょうどティージが開催されていたからだ。
「ミホもサリー着て、お祭りに参加してみる?」
ホームスティ先の娘、17歳のアスタに提案してもらい、アスタと、アスタの母であるサンティと、ヒンドゥー教の民族衣装であるサリーを着てすぐ近くの村の一角へと足を運んだ。
会場になっている赤いテントの中には50席ほどの椅子が用意されていて、女性たちが座っていた。奥で男性がネパール語で話をしていたが、私には到底わかるはずもなく、その場の様子を観察していた。
話が終わると、スピーカーからなにやら楽しそうな音楽が聞こえはじめ、数人の女性が前に出て踊りはじめた。始めはみんな少し照れているようだったが、2曲目に入った頃はとても楽しそうな表情をしていて、次々と人が増えていく。
日本で言う盆踊りみたいなものだろうか。この村のティージでは、伝統的な音楽にあわせて女性たちが踊るんだそう。
「私たちも踊りましょう!」
アスタに手をひっぱられ、私もダンスの輪に入った。見様見真似でみんなに合わせていると、最初は見知らぬ顔が来て驚いていた女性たちも、笑顔で踊りを教えてくれるようになった。
ネパール語や英語を使って話しかけてくれる女性、手を取って一緒に踊ってくれる女性、自分の家族を、一人ひとり紹介してくれる女性。
まるでもともと知り合いだったかのように接してくれる村の女性たち。
「アスタの知り合い?」賑やかな音楽と一緒に踊っている時、ゴマという名前の女性が話しかけてくれた。
彼女はお世話好きの元気なお母さん、といった雰囲気で、笑顔の素敵な太陽のような人だ。彼女のお母さんも、お孫さんを抱っこしながら踊るくらい、パワフルな方だった。
アスタの家にホームステイさせてもらってるという話をすると、「それなら、あなたも私の友達ね。アスタも、お母さんのサンティも、私にとって大切な人だから、彼女達の友達は、私の友達よ」と返してくれた。
アスタやサンティに聞くと、ネパールの、特にこの村では、村人はみんな知り合いで、まるでひとつの家族のようだという。
大きな「家族」の中にお邪魔してみて感じたのは、どこにいても気にかけてくれる、安心感。
大切な人の友達は、私の友達。
自分が大事にしているものの、そのまわりまで気にかけることで生まれる優しさが、この村いっぱいに広がり、そこに安心感が生まれているような気がした。