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絵本「パリのおばあさんの物語」

"生まれて、生きて、死ぬ。これは人間だれもが持つ平等なさだめです。けれど何処にどう生まれるかを、人は選ぶことはできません。この物語のおばあさんの一家はユダヤの人たちです。"

いつも行くお気にいりのカフェでショップカードを見つけ、裏に書いてあった住所を頼りに訪れた場所は、海外からの絵本専門店だった。こじんまりとした店内に、見たことのない絵本が並ぶ。次の予定まであと10分、というところで「パリのおばあさんの物語」という絵本を立ち読みした。

時間が無いから、まずはあとがきを、と思って読んだところに冒頭の文章があり、衝動買いをして帰ってきたのだった。

"おばあさんは鏡をのぞきます。「なんて美しいの」とつぶやきます。顔はたくさんの歴史を物語っているのですもの。目のまわりには楽しく笑い興じたしわ。口のまわりには歯をくいしばって悲しみに耐えた無数のしわ。しわ、しわ、しわ、いとおしいしわ。"

本の中には、過去の思い出とともに今をポジティブに生き、そしてちょっと強がりなおばあさん。

読み進めるうちに、ふと祖母のことを思い出した。家族5人で暮らしてきた家から、1人減り、2人減り……最後は1人で20年近くも生きた祖母もきっと、しわに刻まれたたくさんの思い出を、繰り返し、繰り返し思い出して過ごしていたのかもしれない。

"「わたしにも、若いときがあったのよ。わたしの分の若さはもうもらったの。今は年をとるのが私の番」彼女は人生の道のりの美しかったことや、山積みの困難も知りました。"

生きることと死ぬことは、どうしてこんなに儚いんだろうかという気持ちと、その中に見えた美しさを愛しく思う気持ちをいっしょくたにしながら、立ち読みしたあとがきをもう一度読んだ。

このおばあさんの気持ちに思いを馳せる。そして、祖母にもう1度会いたいなぁ、そうしたら、もっと一緒にいてあげたいな、なんて思う。けれどこればっかりは、もう変えられないからなぁ。


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もりやみほ
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