キッチンは地獄絵図

人が切り裂かれ、焼かれたり、煮込まれたりする地獄絵図。現世で良くない行いをするとこの絵の通りになると言われれば、行いを正そうと思いたくなるくらい恐ろしい光景だ。

「あの地獄絵図、台所の風景とも言われてるんですよ」

串刺しになった焼き鳥を1本1本箸で取っている時に、友人がそんなことを言い始めた。

私たちのキッチンでは、牛、豚、鶏、魚や野菜も、まな板の上で切り刻まれ、時にはフライパンの上で焼かれたり、スープにしてぐつぐつ煮込んだりする。バラバラになった状態で売られているから実感はないけれど、もとをたどっていくとそれは命ある動物。少し前までは人間と同じように生活していた生き物たちだ。地獄絵図が台所って、確かにわからなくもない。

とはいえやっぱり焼き鳥はおいしいし、焼肉はやめられないし、海鮮丼も大好物。食べないでいることはやっぱり難しい。だからこそ、命を提供してくれた生き物に感謝して食べたい。「ありがとう」の気持ちを込めて「いただきます」を言ったり、おいしく料理して幸せな気分で食べたり。自分ができる最大限の敬意はそれになるだろう。

おいしく、楽しく、感謝して。そして残さず食べることを、しっかり意識していきたいなと思った土曜日の夜。渋谷の居酒屋は元気でした。