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一泊二日のグループワーク体験

通常のカウセリングのほかに、年に1回泊まりがけで行うグループワークにも参加していた。

「ファンタジーグループ」というグループワーク。仙台、東京、京都、松山の4ヶ所で開催されていて、わたしはいつも仙台に参加していた。
わたしの心の傷を回復するために、とても重要なものだった。

さまざまな臨床現場で用いられている技法らしいが、仙台は主にカウンセラーやセラピストなど、人を援助する仕事をしている人のリフレッシュトレーニングとしての位置づけが大きかった。

数人のグループに分かれて、フィンガーペインティング、カッティングを行う。
最後の粘土は個人で行う。

グループごとに模造紙に絵の具で自由に描く。フィンガーとあるように筆は使わず手指を使う。絵の具も、粉をにかわ液で溶いて使う。

そのあとカッティング。手で破いてもいいし、はさみを使ってもいい。
バラバラになったものを貼り直して、新たに作品を完成させる。

どちらの作業も無言が原則。 
作業が終わったあと、話し合いの場があり、そこで感じたことを何でも話す。

このグループワークで、今までにないケタ違いの強烈なフラッシュバックに襲われた。

それはカッティングのとき。
模造紙をカットするため、はさみを持とうとしたが身体が硬直して動けなくなった。

そのときは理由が分からず、かろうじてその場を離れることが精一杯だった。

それは、はさみ・ピストルなどは男性性器の象徴だから。人によっては、先が尖ったもの、例えばペンなどが持てなくなった人もいるということを、あとからカウンセラーに教えてもらった。

カッティングのときのはさみを見て、事件当時のことが鮮明に思い出された。
詳しいことは書けないが、加害者と一晩ずっと一緒だった。朝まで知らない男と過ごしていたのだ。

わたしにとって夜、眠るという行為は「死」を意味する。
身体が全部覚えている。
眠ったら最後、自分が何をされるか分からない恐怖。

事件のあとも睡眠障害は長引いた。
30年経った今でも、ふと午前2時や3時に目が覚める。
そこに理由はない。ただ身体だけが覚えてる。

カウンセラーに「自分の心の傷がどれだけ深いものか分かった?」と言われ、こんなにも心が麻痺してしまい、傷の深さも何もかも分からくなっていたんだと、そのとき初めて気づいて涙が止まらなかった。
あの日から5年目のことだった。

グループ作りをするとき、男性の参加者と一緒になるのが怖くて、思わず後退りしてしまったこと
はさみを持てなかったこと
グループワークの場から無言で退出してしまったこと

自分を責めてしまっていたわたしに、カウンセラーが言った。

自分でちゃんと「NO」と意思表示ができたこと。
それができたことは、すごいことなのよと。

粘土の作業も心の傷を癒すには必須だった。
粘土の柔らかい感触に癒されながら、ゴロゴロとまあるくして、なぜか魂のようなものをイメージしながら、りんごのようなものを作っていた。
カウンセラーがそれを見て、浄化が始まっているのかもと言ってくれた。

はさみを持てるようになったのは、その3年後。
回復への道のりはまだまだ先が長いが、それでも着実に進んでいると希望が持てた。

以後、毎年このグループワークに参加し、傷口の回復を確かめていた。

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