見出し画像

夫は自分の価値観をアップデートさせてくれる存在

LGBTQ、男女格差、黒人差別などなど、世界的な多様性の広がりがによる摩擦が、ニュース番組、バラエティ番組、SNSのトレンドで話題としてとりあげられている。そんな世界のありようの変化に関する話題について、ふとした時に私たち夫婦は対話をすることがしばしばある。

いつからこのような対話をするようになったのか、はっきりとは覚えていない。結婚当初からけんかをしても話し合いで、お互いが納得する形で解決しようとはしていたけれど、最初からこういう哲学っぽいことを議論するような間柄ではなかったのは確かだ。なんとなくきっかけかなと思うのは、やはりコロナだろうか。コロナ禍で社会活動が一度停止させられステイホームで、2人ですごす時間が急激に増えたことが一因な気がする。


私の価値観 夫の価値観

昨今の世の中の多様化の根幹にはインターネットと共に発達したSNSの広がりがあると思う。mixiによるネット上の交流のはじまり。Twitter、facebookでのフォロワー数、いいね信仰の発達。Instagramによる映え文化。TikTokのショート動画。これらのSNSは個々人の発信力を増大させ、インフルエンサーとしてのパワーを個人に与えた。個人の台頭は確実に世に影響をもたらした。このような変化に関して、私たち夫婦は異なるとらえ方をしていた。

私の価値観

今まで弱い立場にあった人たちが団結し、立ち上がる力を手に入れた。これが、LGBTQへの理解の促進、女性の社会進出の推進、様々な差別された人のチカラとなったことは言うまでもない。私は、それぞれの人が自分の尊厳のもと自由に生きられる世の中になってきた多様性が発展してきて良いなというのが現状に対する受け止めだった。

夫の価値観(私からの見え方)

夫は、多様化する世の中の風潮に便乗して弱者の皮を被った奴らが、己の義務を果たさずに、権利ばかりを主張するようになってきたからどうしたものかと捉えいているようだった。

私としては、もう少し多様化のポジティブな部分に注目しても良いのではないかと思っていた。けれど、夫からしばしば立場が弱いということを盾にして、自分の主張を通そうとする人に出会う経験について話を聞いていたので、ネガティブな側面に夫が注目するのもしょうがないかもしれないと思っていた。

最近の夫の悩み

そんな夫の最近の悩みは、後輩の指導をどうすべきかということのようだ。指導において彼らは優しく接すると調子に乗って、先輩である自分を嘗めてくるからうまく叱って上下関係を分からせたい。しかし、昨今の多様化の進展により叱るという行為がハラスメントとして受け取られかねない現状で、上下関係を知らない後輩をどう矯正したらよいのだろうかということだった。

私としては後輩に嘗められたという経験もそもそもないのもあるし、”上下関係を理解させる”ような指導はそもそも必要なのだろうかという考えで、後輩とも仲良くやっていきたい派だ。なので、夫の言う上下関係を分からせるという発想自体が、ネガティブなものに強くに縛られている感じがして可愛そうだなと思ってしまっていた。とはいえ、後輩との関係性についてはとても悩んでいる様子だったので、まずは夫の話をよくよく聞いてみようと思い、具体的な後輩について聞いてみることにした。

悩みの種の後輩は2人いるということだった。ひとりはA君で、専門学校卒の入社5年目の後輩で、現在も同じ職場で働いている。もう一人はB君で、学部卒で昨年新卒で入社したばかり、すでに異動したため仕事で関わることは無く、たまに会社のイベントで顔を合わせる程度。この二人についてそれぞれ具体的に聞いてみた。

専門学校卒のA君との悩み

Aくんは専門学校卒なので専門性は高く、その分野に関しては夫よりも詳しく、仕事もそこそこできるようだ。

では何が問題かというと、それは周りへの配慮がない休暇の取り方だそうだ。A君が意図的にやっているのかは不明だが、しばしば会社のイベントに重ねられてくるらしく、夫にはそれが苛立つようである。なぜなら、A君が休むとその会社のイベントに夫が駆り出されることになり、それが後輩から押し付けられているように感じるため腹が立つとのことだった。

また、飲み会の幹事をいつまでも後輩と一緒に担当させられているのも嫌だそうだ。A君が入ってくる前までは、夫が一人で飲み会の幹事をしていたのに、A君はいつまで経っても独り立ちしない。そのうえ、A君は今でも夫からの指示待ちな感じなのにもうんざりしているとのことだ。

学部卒のB君との悩み

B君はというと、これが災害レベルの異端児だったそうだ。自身の権利の主張が非常に激しくて、遠慮というものをまるで理解しない存在だったらしい。B君の歓迎会にも関わらず「僕こんな遅くまで外出したことないので9時に帰ります」と言ったそうな。

さらに、新入社員で右も左も分からない状態にもかかわらず通勤時間が長く、睡眠時間を確保できないから、在宅勤務をしたいと主張したらしい。そんな彼なので、職場の上司も匙を投げたのか、すぐに他の職場に異動となったそうだ。

そんなB君とは現在 ほとんど接点はないのだが、最近たまたまA君の休暇で押し付けられた会社のイベントで接触があったそうだ。相変わらずの異端ぶりで、そのイベント後の飲み会でも上層部の人間に「人生2回目の飲み会なので9時に帰ります。」と言っていたそうだ。

こんな2人の後輩たちとの経験から、後輩との接し方をどうしたらよいかに最近悩んでいたようだ。夫の反省としては、A君に対して優しくしすぎたため嘗められたのが良くなかったと思っているらしい。だから、強く叱れるようになりたいけど、昨今の”弱いものが強い風潮”があり、どう接したら良いかが分からないといことだったらしい。

夫の悩みについて 私のコメント

二人まとめて後輩としてとらえるのはやめて、具体的にそれぞれの問題を考えようと提案した。

A君の休暇問題

会社イベントについては、直接A君と対峙するよりも事務局と連携した方がよいのではないだろうかと伝えた。すると、夫もそのように考えていたようで、イベントの場で事務局との仲を深めたとのことだった。A君よりも先にイベントの情報を入手して、先回りの休暇をとるなど対抗できそうだとなった。

A君との飲み会幹事問題

幹事については、飲み会の場で、面白い引き継ぎ式的なのをやったらどうか?上司もA君も楽しく明確に引き継がれたとわかるようにやったら良いのではないか?と提案してみた。すると夫は、実は自分が昇進するか、新しい後輩がそろそろ入るタイミングなので、そこがちょうどよい区切りになりそうだと考えていたとのことだった。なんだじゃあ、実は解決済みだったんだとなった。

B君の問題

私としては、もう彼は他部署にいるわけだし、なかなかに異常な振る舞いをする人なので、後輩として庇護する対象として考える必要のない”外れ値”だと思う。会社や人事に対応は丸投げで良い。そんな人のために、夫が思い悩む必要はさらさらないと言った。すると、夫はそうか外れ値なのかと。妙に納得していた。みんなまとめて後輩という存在を等しく扱うべきものとして捉えてたけれどそうではないのかと目からうろこを落としていた。

価値観アップデート

こんな話を休日の朝からやっていて、まだ顔も洗っていなかったので、一息ついたところで、立ち上がり洗面台に行った。そして、顔を洗っているところで、突然ひらめいた。

あ。。。 私 実は 全然 寛容じゃ なかった!!!

私は多様性のある社会で、それぞれが個性を活かして生きれる社会になると良いと言っているとき、当たり前のように私が嫌いな人をその世界の仲間に入れていなかった。それに対して、夫は自分が嫌っている対象についても自分の世界の仲間に入れて考えていた。だから、嫌っている人ともうまくやるためには、弱者のふりをした人への厳しめの対応が必要であると言っていたのだ。

自分の嫌いな人を人として扱ってない自分を棚上げして、多様化が進展するまで虐げられていた人ではなく、弱者の皮を被って便乗する人に焦点を当てるなんて、夫は心が狭いなとか思ってた。でも私も余裕で心が狭かったことに気づいた。嫌いな人を人扱いしていない分、私の方がひどいかもしれない。

だからと言って私の考え方も、夫の考え方も、どちらも正解とか不正解だとかは思っていない。実は私は夏油に近い考え方だったのだと分かったことが収穫だ。世界のとらえ方、見てるところが全然違ったというのが、今回の大きな気づきだった。
※呪術回戦の敵キャラ、呪術師の世界をつくるために一般人を全員抹殺しようとした人

私は夫の鏡で 夫は私の鏡

SNSの功罪とか多様化の負の側面とかの対話はこれまでにも、夫とけっこうやっていたけれど、今までそれぞれの考える前提がズレていたということには全く気づいていなかった。

私は女という社会的に弱い立場にあった者の一人として、多様化が進んで行く今の状況は肯定的に捉えてきていた。それに対して、夫はやはり男というどちらかというと強い側にいたから、弱い者の辛さは分かりにくいことがあるのかもしれないという風にも少し思っていたところもあった。

今回の対話で、全然そういうことではないということが分かった。そもそもの世界のとらえ方が違ったのだ。どうしても、自分の都合の良いように世界を解釈してしまう。いつも隣にいる夫のことでさえ、自分のフィルターを通して勝手な解釈をしてしまっていた。

きっとこれからも、夫のことを勝手に解釈してしまうだろう。だから、これからもふとした対話で、お互いの考えを相手に共有して、相手から返ってくる言葉・表情・雰囲気から、自分の価値観をアップデートさせ続けていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?