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面白さと羞恥との戦い 「風と共にゆとりぬ」

少し間が空きましたが、話題にしていないだけでなんだかんだ読みすすめています。ということで学びや読む経験を得るための「エッセイを学ぶ」企画、第2回目です。

2人目となる今回は朝井リョウの「風と共にゆとりぬ」です。

朝井リョウさんは映画にもなった「桐島、部活やめるってよ」でデビューをした小説家で、このエッセイは「時をかけるゆとり」に続く2作品目になります。

この本はまず大きく分けて3つの構成になっています。日常が書かれた「日常」、新聞の連載によるエッセイ「プロムナード」、そして肛門に関する病との戦いの記録である「肛門記」です。

それぞれにいくつものエピソードが存在するわけですが、読んでいてゆとりと自称する作者の日常と状況を例える比喩、そしてエピソードとしての面白さが同時に存在し、とても楽しい作品でした。

ただその一方でこの本には面白いんだけど・・・と同時に存在する要素があります。それは共感性羞恥です。読んでいて面白いんだけど、早くこの羞恥な部分から脱出してこの編を読み終わりたい、けど進まないという複雑で奇妙な感覚とずっと格闘していました。

これは特に「日常」で顕著です。面白いと羞恥が同時に存在するのがわかると、本を開くのにも別の意味で葛藤が生まれます。「面白いんだけど・・・面白いんだけど!」この数日の間何度これに悩まされたのでしょう。

前回3,4日で読んだ「47都道府県女ひとりで行ってみよう」と違い、読み進むのに時間がかかった理由はこれです。決して本がかばんの奥底に眠っていて取り出すのがおっくうだったからではありません。共感性羞恥との戦い、これがすべてです。

「日常」での羞恥との戦いを超えるとかなり平穏になってきます。「プロムナード」は新聞にも連載されていたものでもあるのか、羞恥というトゲは驚くほどに収まりました。そうなると今度はトゲがほしいというモヤモヤが頭に残ります。

もちろん「プロムナード」も一つ一つが面白いし、仕事柄なエピソードもなかなかに興味深いものがいくつかありました。ただそこにはどこかうっすらとした物足りなさを感じました。

羞恥との戦いがこの本のすべてのような話になってしまいましたが、こういう風に思ってしまうのは、結局作者が読者に与える感情を呼び起こす武器がそれほどまでに優れているからなのではと思います。

実際本職である小説では「桐島、部活やめるってよ」の他にも「チア男子!!」や直木賞を受賞した「何者」といった数多くの作品があります。

小説家は武器を使う方向を変えるだけで、ここまで面白く感情を読者に与えることができる。それがこの本で得た一番の学びなのかもしれません。

ちなみにこの本の帯の裏面には「読んで得るものお特にナシ!」とあります。

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あれ?

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