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情報・データ分析力 ~どこでも通用するスキルを身に着ける⑨~

今回は情報・データ分析力について語っていきたい。企業内外には様々なデータや情報があるけども、それを十分に有効活用できていないように感じる。その主たる原因として、①データ分析の目的が不明確、②分析の切り口や視点の不足、③分析結果の施策や行動への転換不足、があると思っている。今回は①②に焦点を充てて共有していく。

データ分析の目的

私はデータ分析の目的をこう定義している。一つは、企業・組織内における"機会損失"を発見・提示し、気づきを与える。もう一つは、"機会損失"を減らすための新たな行動を促すことにあると思っている。そのためには、どんな機会損失を発見するのか、機会損失をどう定量的に示すのかのか、どう次に繋げていくのかという視点が必要になってくる。

機会損失とは?

そもそも機会損失とは何か? 私の定義は、その企業や組織が潜在能力を発揮したら得られるはずの売上や利益、としている(下図参照)。サッカー元日本代表の本田圭佑選手がよく口にされる”伸びしろ”だと思ってもらえればいい。

例えば、

・新規顧客開拓・既存顧客深耕不足による逸失売上や利益

・マネジメント起因による失注金額

・品質管理不足に起因したクレーム対応にかかったコスト

・外部ベンダーとの交渉不足により発生した余分な費用 などなど

様々な視点・切り口で見ていくと、”機会損失”は大きく、これを顕在化していくことは企業にとっても意味のあることだと思う。

機会損失

機会損失の発見方法

では、機会損失をどのように発見していけばいいのだろうか?

データ分析そのものを中心に添えつつ、観察やヒアリングやアンケートを組み合わせながら、分析をしていくのがいい(下図参照)。特にデータ分析を実施する前に”あたりをつける”意味で、ヒアリングは必ず実施する。ヒアリングを通じて、事前に考えていた仮説を検証していく。また、データを眺めていても手触り感が出てこないので、データに関わる現場観察を行う。そうするとデータの持つ意味合いが見えてくる。また、既存にあるデータだけでは不十分であれば、観察を通じて、新たなデータを作っていくことも有効である。

機会損失発見方法

分析の視点・切り口

では、どんな視点で分析をしていけばいいのだろうか? 大きく2つの視点があると思っている(下図参照)。 

軸を持って比較をする:

目標/あるべき姿との比較、ポテンシャルとの比較、ベンチマークとの比較、ベストパフォーマンス平均パフォーマンスとの比較など、何かしらの軸を持って比較する。例えば、トップ営業層の営業利益額と比較して、他の営業担当の方の営業利益額とのギャップ総額。乱暴な議論ではあるが、”あの人達にできるなら、他の人達も同じようなパフォーマンスを発揮できてもおかしくないよね”という発想である。これは極端な基準ではあるが、その企業・組織において、どこを基準に置くのが最もらしいのかはヒアリングや観察を通じて、見極めていく必要がある。

②パターンを発見する

もう一つは、成功・失敗パターンを抽出したり、各指標(成果指標、成果要因指標、行動指標)との関連性からパターンを抽出し、成功パターンから”機会損失”を算出していく。

データ分析の視点・切り口

分析事例

例えば、どういう分析をするのかを事例をもとに共有していく。あくまで、分析の一例だと思って頂きたい。

①営業部門~ポテンシャル分析:顧客別のインストア・シェア(=顧客内における当該企業のシェア)の目標を基準にして、現状値とのギャップ(="機会損失”)を算出したり、過去1年分の失注理由を確認し、マネジメント要因を基準にして失注額(=”機会損失”)を算出したりする。

分析事例①

②製造部門~ベストパフォーマンス分析:製造部門の場合はライン別や日別や時間帯別の生産性のベストパフォーマンスを基準にして、”生産性向上余地(="機会損失”)を算出したりする。

分析事例②

③購買部門~コスト削減余地:購買部門の場合は、購入品(資材を含む)に対してコストダウン施策を講じているかどうかを基準にして、コスト削減余地(=機会損失)を算出することもある。

分析事例3

④物流部門~配送ルート見直し:配送ルートを最適化している状態を基準にして、どれくらい配送費が削減できるのか(=機会損失)を算出することもある。

分析事例④

④店舗部門~接客率・購入率分析:店舗部門の場合は、来店客への接客率が購入率の向上に繋がることがある。その場合には、店舗観察を通じて、接客した場合の購入率や、接客していない場合の購入率を比較して、接客した場合の購入率を基準とし、売上高や粗利高の改善幅(=”機会損失”)を算出することもある。

分析事例⑤

総括

ここまでデータ分析の目的、機会損失の定義、機会損失の発見方法、分析の視点・切り口、そして具体的な事例を共有してきた。

各組織の機能によって、分析の視点や切り口や分析手法はある程度パターン化される。そして、何かしらの”基準”を設定すれば、”機会損失”を定量化することができる。ヒアリングや現場観察を通じて、その基準を確からしいものにしていくことが肝要である。さらに、最終的には「こうすれば改善できる」という打ち手の方向性までを見据えて、”機会損失”を提示できると、気づきを与え、行動を促すことに繋がっていく。

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