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愛の喪に服す⑥〜エネルギー残穢問題〜

ゴミみたいな別れ方をしたY氏からはなんの音信もないまま10日が経つ頃に、別の人と知り合う機会があった。
本来切り替えの早い私は、もうその頃にはY氏のことは清算しつつあって、わりと波動の高い状態で新しい人に会った。

私は彼の知識量の豊富さとか、内面の静けさに興味を持って(容姿もよかったし!)、初めて会った日から毎日やりとりをするようになった。
相手も私を気に入ってくれているのが伝わった。
そのやりとりは、主に彼が自分の価値観や好きなものについて語り、それに対して私がリアクションを返すという形式が出来上がっていて、彼の感性に純粋な興味があった私にとっては楽しいものだった。はずだった。

最初に違和感を覚えたのは、私が少しだけ自分のことを話した時だ。
彼は私の語った内容には一切反応を示さず、いつものように自分の得意分野を意気揚々と綴った返信を寄越した。

たまたまかな?と思い、今度は彼の「俺語り」への返信に、私が好きな音楽や文学のことを少しずつ混ぜ込んでみた。
すると、そのほとんどすべてに(!)見事に無反応だった。
まるで、私の事なんて何も書かれていないかのように、LINEのラリーは進んだ。

そのくせ彼は、とにかく私と会いたがった。
早く会いたい、顔が見たい、仕事で疲れているから、みるこちゃんに会って癒されたい。

一方的なその態度に若干引いてしまった私は、
「ちゃんと心の繋がりが持てるといいですね」
と書き送り、
そして見事に既読スルーを食らった。


***


翌日、高熱で目が覚めた。
風邪で熱が出た時などは、だいたい弱気になってしまうのに、なぜかその日は朝から無性にイライラしていた。
昔された嫌なことを突如思い出しては心を乱し、正体不明の衝動に突き動かされて嫌いな相手への罵詈雑言をEvernoteに書き綴って、我に返りはっとした。

「ああ私、すげー怒ってるんだ」

ようするに大昔にされたことへの怒りは代替で、
Y氏との音信不通別れに端を発する一連の精神的負荷で、私の心は疲れていたし、傷ついて怒っていたのだ。

Y氏とは、喧嘩をきっかけに無視され続けて別れに至った。
新しく出会った人は、一方的に「性欲」と「承認欲」をゴミ箱みたいに投げ込んできた。

「私」を置き去りにされたことへの怒りは水面下で徐々に蓄積していって、
そしてある朝、発熱という形で暴発した。

小野不由美の「残穢」という小説がある。
それは、土地に残された人間の怨念が、何代にも渡ってそこに住む人間に怪事や不幸をもたらすというような内容で、まあ要するに「祟り」みたいな話だった。(ものすごい厚みを持たせて作り込まれた小説で、とても面白かった)
こういう祟りみたいな話も、エネルギーの問題なんじゃないかと思う。
上手に昇華されずにわだかまった人間の感情は情念となり、満たされなかった分を奪おうとする働きが、奪われた側の不幸となって現れる。

私の発熱は、自分の怒りに目を向けなさいというシグナルであると同時に、
奪う相手がいないから起こった自爆テロのようなものだったのかもしれない。
いや、それよりもはっきりと、怒りの発露そのものだったのかも。ゴジラの背中が赤くなるみたいな。

自分の怒りに気づけたとき、不思議とそれはマグマのような熱と重さを失った。
怒っている事実を事実として認め、怒りの感情の蓋を取り払って外に出せる準備を整えたとき、作業はもう半分くらい終了したとおもった。

あとはまた温泉にでも出かけられたら最高なのだけど。

#恋愛 #失恋 #スピリチュアル #日常 #コラム #男女 #心理








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