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一度会っただけなのに、忘れられない人っていますか?

今回私が出会った人は、その人の人間性や生き方に感銘を受けたから忘れられない人と思ったのかな。きっと、誰もが彼の在り方を見たら、同じ気持ちになるんじゃないかな。。。あ、恋愛感情じゃないので、あらかじめ。。

彼は大学のマラソンチームのコーチ。年齢不詳、だけど彼が確実に70歳を超えていることを誰もが知っている。

娘の在籍しているボストンにある大学のマラソンチームのコーチに、私は久しぶりに目を奪われた。
身長は多分155センチくらいだろう、白人の男性にすれば驚くほど低い。短パンから出ている足も細く、大きめのジャケットを着ていなければきっとすごく華奢に違いない。

けれども、彼の顔にはたくさんの皺と笑みがいつもあり、強さと優しさのオーラでものすごい存在感がある。

陰鬱なアメリカ東海岸の長い冬とコロナによる引きこもりと何でも生真面目に思い詰める性格から娘はメンタルヘルス問題を抱えていた。こちらからFace Timeコールを何回しても応答がなく、コールバックも数日ないと、最悪の想像をして心配でたまらなくなったりした。

娘は学費の足しにずっと長い間学校の図書館で働いていた。
PCの操作が分からず困っていた小柄なおじいちゃん(=コーチ)に、ちょっとしたPCの操作を教えてあげたことが出会いだったらしい。ずっと陸上をしていた娘をチームの練習にコーチが招待してくれたときから、娘の中に新しいものが動き出した。

そのコーチは、いつもニコニコしている。怒っているのを見たことがない。メンバーの一人一人を分け隔てなく見ていて、それぞれの成長を喜んでくれている。早朝6時からの練習のため、真冬の3時に起きて水分補給のための水タンクや糖分補給のためのスナックを数マイル先に用意してくれてから、集合時間にやってくる,  などなど、娘の口から語られるコーチは素晴らしい人そのものだった。

マラソン当日、私と夫はコーチに会ったことがなかったのだが、彼だと一目見て分かった。ニコニコして話をしている彼の周りには、独特のオーラがあった。優しく、声をかけたくなるような陽だまりのような明るさがあった。

マラソン当日、次々と卒業生や知人の参加選手が彼を見つけて駆け寄ってハイファイブ/ハグをして駆け抜けていく。コーチの顔から喜びが溢れているのが伝わってくる。

娘が9マイル地点を通過するときに、私はお手製のスポーツドリンクを手渡しすることができた。コーチがミラクルパワーが出ると言われるお手製伝説のピーナツバターサンドイッチを娘に手渡す。娘が足を止めることなく、それらのギフトを受け取り、走り去っていく後ろ姿を見て、なんかほろっと来てしまった。あれだけ心配していたはずの娘の逞しい姿を見て、最高にうれしくなって見えなくなるまでずっと叫んで応援していた。

私の隣には同じように満足そうに後ろ姿を見送るコーチがいた。彼は毎年たくさんの後ろ姿を見てきただろう。毎年チームの最後の一人がゴールするまで、寒空の中ひたすら待つ。完走してくる選手を笑顔で迎えるため。

力強い暖かなオーラと忘れられない笑顔のコーチは、年齢に囚われない生き方のお手本のような人だった。その後、地元の新聞や大学のSNSで取りあげられている記事を読んだ。みんな同じことを感じていた。一度会ったら忘れられない笑顔のコーチ。みんな 彼のことをLegendと語った。



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