ライターになる道はいと険し2
フリーランスのライターとして働いていた私は、唯一のクライアントであるライティング代行会社の社長の言葉に青くなった。
「みっふぃーなさんの記事は、エンドクライアントが満足できるレベルになるまで修正してもらいます」と。
当然完了になるまでノーギャラということだ。
母子家庭の私にノーギャラというのはありえない!必死になった私は思わず言った。
「あの、うち母子家庭なんで仕事がないと困るんですけど……」
「母子家庭なら余計頑張らないと!僕だってみっふぃーなさんには頑張ってほしいんですよ。」
何も言い返せなかった私。中には「訴えてやる!」と鼻息荒くする人もいるだろう。しかし、私は大学で法律を学んだ身。業務委託契約がどのようなものであるのかわかっていた。業務委託契約は、雇用契約とは全く違う。クライアントが満足する成果物を納品できなければクライアントは報酬を支払う必要はない。
「こんなことなら会社辞めるんじゃなかった!」
初めてフリーランスの厳しさを思い知った私。きっと、それまでは会社員感覚でいたのだ。毎月定期的に決まった量の仕事が来て、それをこなせば給料がもらえるという。フリーランスを甘く見ていた自分を呪った。
以前から、フリーランスの元夫にはいつも忠告されていた。フリーランスより会社員の方がいいと。聞いてはいたのだけど、実際に自分が経験するとまるで違っていた。
しかも、問題はノーギャラなだけではなかった。私のライティング力を鍛えるため、社長自ら毎日ZOOMで特訓すると言われたのだ。
私が担当したクライアントは、ライティング代行会社のクライアントの中で一番厳しい。クライアントによっては、ライターの書いた文章に何も言わないところもあるだが。
自分の不運を呪うばかり。
「なんでライター初めてなのに、そんな厳しいクライアントの担当になったんだろう?」
と自問自答。
こうして私の特訓生活が始まった。毎日社長に電話され、ZOOMでの特訓。内容は、修正の入った記事について説明を受け質問に答えるというもの。教わったことをベースに記事を修正し再提出。
どうやら社長は、私を厳しいクライアントのお気に入りのライターに育成したかったよう。しかし、ノーギャラで延々と社長のレクチャーを聴いている毎日に耐えられるわけもない。何せ私は母子家庭。このままでは親子そろって路頭に迷う。
思わず道端で乞食をやっている自分を想像してしまった。
「まずい!このままでは親子そろって餓死になっちゃう!」
そこで私が始めたのは、Twitterで声をかけてくれたマッチングサイトへの登録とクラウドワークスでの応募。以前「デスパレートな妻たち」というドラマがあったが、そのときの私はまさにそんな心境。
マッチングサイト登録後、ほどなくして私はある会社が興味を持っていると担当者から聞かされる。無事にテストを通過し、うれし涙をこぼす私。しかし、この会社へ合格したことが代行会社と私の縁を切るきっかけになるのである。
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