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まくらはオシャレじゃなくていい。

人生の3分の1は眠っているのだから、寝具にはこだわったほうがいい。

うーん、わかる。
でも、残りの3分の2は起きてるんだから人生の過半数以下だし、なんとなくで良くない?
私はそういうマインドで寝具を選んでいる。

新居では敷布団で寝ているのだけどなんとなく、起きたときに気だるさを感じるようになってしまった。

本当はベッドで眠った方がいいことはわかっているけど、部屋が狭くなる事と天秤にかけると、使わないときは収納できる敷布団を選んでしまう。(しかも、春に車検が迫っているし、節約したい。)

だからせめてごまかしとして、枕を新調することにした。

無印良品やニトリで手当たり次第にサンプルの枕を触る。
十代のころは高さがある枕に、しがみつくようにして眠ると安心したけど、最近は低い方がいいなと思うようになった。

枕が高いと、首にシワができる。
これは私にとって“知りたくなかった情報”の一つだ。

この情報を知ってから、高さのある枕に出会うと《シワ》と、まるで洞窟の中で音が反響するように頭に浮かぶようになってしまった。自分が安心すると思っていたことが、不安の材料になってしまうとは。

年相応の見た目になることは歓迎するけれど、「まだまだそんな歳じゃないのに」という姿になるのは、できるのなら予防しておきたい。

と、なるとふわふわの羽毛や綿がたっぷり入った枕はやめておきたい。
では、低反発やパイプ、そばがらはどうか。

どれを触ってもしっくりくるし、しっくりしないとも言える。
つまりわからないということだ。

ピンとこないのなら、今日はもういいか。
そんな諦めの気分になってきた体を引きずり、最後にここだけ、としまむらへ向かう。プチプラの代名詞、しまむら。

しまむらの寝具コーナーは、それはそれは情報量が多い。
本当に寝させる気ある?と思うような鮮やかな色や、これでもかというくらいびっしりの柄、そして、その寝具がいかに眠りに良いかを熱弁するパッケージ。
冒頭で書いた、「人生の3分の1は〜」の文言も当然ある。
今の私の疲れた体では、この文言にいつも以上に反発したくなる。

いくつも種類があるように見せかけて、実際は5種類しか選択肢がない棚から、「横向き寝が多い方向け」の枕を手に取る。
中央がへこんでいて、パルプと低反発を組み合わせて通気性を良くした低い枕。1450円。揉んでみると、硬さもちょうどいい。

他の店で悩んだ数十分はなんだったんだというほど、ピンときた。
この枕で眠る自分が想像できた。これにしよう。

枕を選んだら、次は枕カバーを選ばなければならない。
私は眠る時、口が開いてしまう女なのでカバーは必須だ。

シルクとか、サラサラの薄いカバーは、一回寝ただけで終わる。
よだれが出続けているので、タオル地の分厚いカバーでないと受け切れない。自分で暴露しているが、かなり恥ずかしい。口閉じてくれ。

カバー売り場には、ほとんどの枕に合うサイズのカバーとして、ぱっと見は腹巻のようにみえる“のびのびカバー”という商品が売られていた。

のびのび、というだけあって伸縮性を重視しているからか、素材はタオル地のものばかりだった。

しかし、なぜかボーダー柄しかない。
選択肢としてこの売り場に出されているのは、ボーダー柄の青色か緑色、もしくは、ボーダー柄にキャラクター刺繍が入っているもののいずれか。

ドラえもん、すみっこぐらし、クロミ、シナモロール。

結構いいキャラクターラインナップだ。普通にうれしい。
いや普通に嬉しいけども。

私は結構悩んで、キャラ刺繍の無い青色ボーダーをレジへと運んだ。

夜になって、枕をセッティングする。
洗濯は間に合わなかったので、今日だけ、フェイスタオルを巻いて使うことにする。

パッケージの通り、横向きで頭を預けると確かにしっくりくる。
お手頃価格なのに表記通りの実力があるなんて、驚いた。

目を閉じて今日見てきたいくつもの枕を思い出す。
どれもシンプルでどんな部屋にも合うようにデザインされた枕だった。

でも私が持って帰ってきたのは、情報量の多いパッケージのこれからボーダー柄になる枕。
実家の押し入れに、10個くらいありそうな安心感。
申し訳ないけれど、おしゃれとは言い難い。

しかしおそらく、私は“そこが良い”と感じたのだと思う。
「寝ている姿なんて、そうそう他人には見られない姿なんだし、そんなときくらいおしゃれせず気を抜いていたい」と心が気づいたんだと思う。

起きている間は、見栄を張りたい。
だからそのぶん、寝るときは安心感に全部振り切る。
そう思って眠るのが、私にとって良い睡眠なんだと思う。



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