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ちょっとした一言を見逃さない#001 解決を求めない会話への対応

この記事は医療機関の管理職に向けて書いたものですが、医療機関だけではない職場にも同じことが言えると思いますので、よろしければお付き合いください。

ちょっとした一言を見逃さないシリーズ
さて、「ちょっとした一言」から、本音を垣間見る瞬間ってありますよね。その一言から会話をしていく中でみえてくる風景があります。今日は「解決を求めない会話」についてお話します。


「◯◯さんのことが心配で・・・」
ある看護師さんの話です。この看護師は、職場の人の出入りが忙しくて多忙になりつつあったチームリーダー看護師です。当時事務長だったわたしに対して、「話がある」というので、時間をとって話を聞くことになりました。チームリーダーによると、あるチーム内のスタッフが「疲れているようで、心配なんです」と話し始めました。「そうなのですね、確かに最近元気はないですね、何か心配な点はございますか?」と尋ねました。「申し送りが十分に出来ていないようで困っています」との話でした。


話の主語が変わりはじめる
「前はどうでしたか?」と、従来のスタッフと今のスタッフのギャップを確認します。そうしましたら、「最近、医師が辞めることもあり、チーム全体が忙しくなっています、、、それもあるかもしれない」と話が変わりました。主語は「あるスタッフ」から、「チーム全体」に変わりました。わたしは主語が変更になったことに気づき、「そのスタッフも含めて、みんなが疲れているということ?」と聞き直します。すると、チームリーダーは待ってましたといわんばかりに「そうなんです、実は最近、◯◯さんと▲▲さんとの間でやりとりが上手くいっておらず、雰囲気が悪いのです」と、今度は「◯◯さんと▲▲さん」へと主語が変わります。


リーダーは何を伝えたかったのか
1人のスタッフのことを心配していた流れから、主語がチーム全体へ。そして、また別の2人へ主語が変わりました。こういう話を聞くときに、わたしは「きっと話したいことは別にあるかも知れない」と感じますが、話を引き続き聞きます。そしてリーダーが話し終えたときに質問します。「チームリーダーは私に何をしてほしいですか?できる限り対応したいと思います」と話すと、「いえ、現状を伝えたかっただけなので、聞いてもらえるだけでいいです。このことは他のスタッフには言わないで下さいね」と、安堵した顔で話を終えました。

リーダーが本当に伝えたかったこと
このケースでいうと、チームリーダーは自分が忙しくなり大変だったので、あるスタッフを例に挙げて、その大変さを理解してほしかった、ということのようでした。ただ話を聞いて欲しかったのです。自分が大変だということが言いにくい、けれども伝えたいとき、特に責任感が強い人ほどその傾向は強く、言いにくいことを、他の方を心配する形で伝えることがあります。チームスタッフのために、具体的に何かするよりも、今話し手は何を求めているのかを注意深く聞くことはとても大切だと思います。


解決を求めていない会話の中で、管理職ができること
わたしは課題があれば解決するために動くのが、リーダーの役目だと思っています。ただし、上記の会話は、課題を見つけて解決するという思考だけだと、見落としがちです。上の会話は「解決を求めていない会話」です。実はこの会話を大切にしているスタッフが医療機関(特に看護師)には多い気がします。肌感覚ですが、解決は求めていないけど、悩んでいることを聞いて欲しい、というケースです。

問題解決志向型の管理職への留意点
管理職としては、課題があれば解決するのが筋だと思いますが、話を聞いてもらうことによって、安堵感を得たい場合があります。そんな会話が必要なのかと、問題解決思考型の方は考えるかも知れません。特に常に課題解決を迫られる職種であればなおさらです。何か関与する必要がある課題があったとしても、まずは「聞いて欲しい、理解して欲しい」を優先した方が良い場合もあります。そんなときは話を聞いて、その心を留めておきます。

話の本質を言葉に頼らない
スタッフによっては、ただ「話を聞いて欲しい」とストレートに言う方もいれば、別の理由(この場合は、別のスタッフが心配というケース)で話がスタートすることもあるので、言葉に頼らない方法で、相手を理解することが大切です。私の場合ですが、「主語がかわっていく」話の場合は、別の理由があると考えます。主語が変わるときは、本当に伝えたいことがあると思って、話を聞くと良好な関係性が築けると思います。

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