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【議員の法案】野党は国会で何をしているの?【可視化】

※この記事は、閣法に対する賛否を扱った前回記事の続きです。

3.議員立法

 さて、野党は質問するか賛否を示すか、この2つの姿ばかり見えがちですが、法律を作り、政治を動かす、なんてことはしているのでしょうか?ここからは「議員立法」について見ていきましょう。

3-1.議員立法とは?

 国会にはいくつか機能があります。国民から選ばれた議員が国民を代表して政治に関わる機能、内閣を作る機能などがありますが、その中でも大事なのは法律を作る機能です。全ての法律案は国会に提出され、国会が賛成しなければ成立しません。
 さて、国会に提出される法案には、実は2種類があります。内閣が出す法案と、議員が出す法案です。前者を閣法、後者を衆法または参法と呼びます。
 閣法は、官僚が作った法案を、内閣が国会に提出した上で審議します。一方、衆法や参法といった議員立法は、主に野党や国会議員のグループ(議連)などが自主的に法案を国会に提出するものです。
 閣法は毎年たくさん提出される国会のメインの法案です。国会では、内閣を支持する与党が過半数を占めているため、基本的に閣法の審議が優先され、議員による立法は後回しにされがちです。しかしながら、全く審議されないというわけではなく、毎年数本は必ず審議の上可決・公布されます。

3-2.議員立法のデータ

 では実際、日本で議員立法はどの程度成立しているのか?各国を比較してみました。

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※五ノ井(2017)をもとに筆者作成
※各折れ線が具体的に何のデータを指しているかは、出典元を参照のこと。ちなみに、日本は議員立法のうち衆議院に提出された法案(衆法)を対象としている
※縦軸は対象の期間(会期や次の選挙まで)における議員立法成立率(%)、横軸は年。各成立率は、対象となった期間の中央に近いところで表されている

 扱っている国は、どれも議院内閣制(に近い体制)を採っています。議院内閣制は、首相が議会によって選ばれる制度です。国民が大統領を直接選ぶ大統領制と違って、ほぼ必ず与党が議会の過半数を占めています。なので、内閣が出した法案は通りやすい一方で、野党が出した法案は与党に阻まれ、まず通ることはありません
 グラフを見ると、対象にしている8カ国のうち、実は日本はトップクラスで議員立法(衆法)が成立している国であることが分かると思います。もちろん、単純には比較できません。日本では議員が法案を提出するためには、最低でも衆議院で20人、参議院で10人の賛同者を集めないといけないので、特に要件のない英・仏・伊・カナダなどより法案出すことが難しくなっています。なので成立率では日本のほうが高いですが、成立本数はほぼ同じだったりします。

 参議院で提出された法案(参法)も加えてみました。

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※横軸は国会の会期。一番左の183回国会は、2013年の通常国会(第二次安倍政権になって初めての国会)
※平均値は、表示している18回分の国会での議員立法成立率に対するもの
※184・191・194・199回は、議員立法自体がなかったのでグラフ上では表示していない

 参法を加えても、ここ10年弱の平均は約13%。30%台をうろうろしていた衆法の成立率からは大きく下がりましたが、それでもその他の議院内閣制国家に比べれば、成立率が高いことがわかります。

 では実際、どういった議員立法が成立しているのか?実のところ、野党が提出した法案が可決されることはほぼありません。与野党双方から議員が参加して作られた法案や、国会の中にある委員会が提出する法案がほとんどです。政府内で調整が難しい政策やニッチな内容、国ではできないような思い切った措置などを、官僚より国民に近い議員が、与野党の壁をこえ協力して法律を作っています

 野党も、自分たちが公約に掲げた政策についての議員立法を提出することがあります。しかし、与党がわざわざ野党の政策を実現させてあげる理由はありませんから、大抵は審議すらされずに終わります。例えば195~198回国会において、野党議員が提出した法案のうち、審議・議決にまで至った数は204本中わずか7本だそうです
 そうはいっても必ず葬られるというわけではなく、野党が提示した対案が、閣法の中に参考として取り入れられたり、修正によって野党案に近くなったりする例もあります。

まとめ

 議員立法は、政府の手が回らない部分や足りていない部分を、与野党が一緒になって補っていく有効なツールです。野党にとっても、自分たちが政権を取ったときにこの国をどうしていきたいか、国民に示しアピールすることができます。
 野党は決して質問や文句ばかりを言っているわけではありません。もちろん、野党がおかしなことを一切していない、と主張するつもりもありません。でも、テレビが伝える表層的な政治の裏側でも、ときには与党とも協力して、地道にこの国のために活動していることも、知っておいてほしいのです。

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参考文献(前半後半双方ともに)
茅野千江子『議員立法の実際-議員立法はどのようにして行われてきたのか-』第一法規、2017
五ノ井健「日本の議員立法-国際比較の視点から-」『早稲田政治広報研究』114,1-16、2017
中谷一馬「「野党は賛成ばかりして対案を出し続けている」が客観的な事実」アゴラ、2019年7月13日(2020年2月25日最終閲覧)(http://agora-web.jp/archives/2040283.html


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