スピンオフ小説「1/3の失恋」-6
第 12 章
片思いしていたミエハルくんと喋れなくなって、別れようと思ってたN先輩とは別れるキッカケが掴めなくて、そのまま2年生が終わり、3年生に上がったアタシは、物凄い中途半端な心理状態。
そしてミエハルくんとは、3年生に上がったらクラスが別々になっちゃったから、喋るには部活の時しかチャンスがなくなっちゃったの。
その代わり、アタシの親友Tちゃんが、ミエハルくんと同じクラスになったんだよ。
アタシ、ミエハルくんはTちゃんのことが好きだと思ってたんだけど、いつの間にかアタシのことを好きになってくれてたみたいなのね。
卒業式の後、クラスでミエハルくんから聞いた告白は、アタシには辛かったもん…。
元々の原因は、ミエハルくんに元気出してもらおうと思って、友達以上恋人未満みたいな行動をしたアタシにあるから仕方ないんだけど、問題はアタシもミエハルくんのことが好きになっちゃったことなの。だから、お互い両思いだったの。
でも、せっかくアタシのことを好きになってくれたミエハルくんは、アタシとN先輩が抱き合ってる現場を見ちゃったから、もうアタシに対する恋愛感情は無くなったと思うの。
というかミエハルくんのことだから、無理にでもアタシへの好きって気持ちは消そうとするはず。
1年付き合ってきたから、ミエハルくんの性格は分かってるつもりだし。
今はN先輩と形上は付き合ってるけど、N先輩が高校に通いだしたらまた会えなくなるし、今度は1学年違うだけじゃなくて、通う学校自体が違うから、前もなかなか会えなかったのに、もっと会えない時間が増えるよ、きっと。
そんな、一応彼氏がいる状態だから、アタシは中学校の中で身動きが取れないんだ。
だから、ミエハルくんとはもうお話も出来ないと思うんだよ…(。•́︿•̀。)
3年生になって部活に毎日出てはいるけど、ミエハルくんとはたまーに目が合うんだけど、スッと逸らされちゃうし。
こんな時は親友のTちゃんに相談すべきかなと思ったりするけど、Tちゃんはなんとなくミエハルくんのことが、好きとは言わないまでも、気になっている状態だから、ミエハルくんについての相談なんかできないし。
そして一時的にアタシを好きになってくれたミエハルくんは、元々はTちゃんのことが好きだったから、今は再びTちゃんのことを思うようになってるんだろうなぁ。
去年の今頃とか、途中入部したミエハルくんに、吹奏楽部を辞めさせないように、必死に話し掛けたりしてたなぁ。
あの頃に戻りたいなぁ…。
あーっ、アタシはどうしたらいいの?
「や・ま・が・み・さん!」
はいっ?
「最近、元気無いのぉ。何を悩みよるんじゃ?」
後ろから声が聞こえて、振り向いたらY先生だった。
思い切って、Y先生に相談してみようかな…。
「先生、悩みがあるんです。相談に乗ってくれませんか?」
「お、いきなり俺の予想的中か?うん、いつでもええよ。部活の後にでも職員室にお出で」
「ありがとうございます、先生」
Y先生はいつも頼りになるけど、今日はとても背中が大きく見えた。
どうか先生、アタシを助けて…。
そして今日も部活が終わり、ミエハルくんは淡々と楽器を片付け、時々男子の後輩達と冗談言い合いながら、最後の一人が音楽室を出ていくまで、待ってる。
アタシは、先に職員室へ急いで駆けつけて、Y先生に相談に乗ってもらうんだ。
あれ?いつものY先生の席に、先生がいない…。
「Y先生ーっ!」
「おお、山神。こっちだよ、こっち」
Y先生は、奥のパーテーションで仕切られた相談コーナーみたいな所にいたの。分かんないよ、そんな所にいたら…。
「先生、そこにいたら分かんないよ~」
「俺の席でもいいけど、もうすぐミエハルが音楽室のカギ締めて、俺の所に持ってくるぞ?それは、マズイ!んだろ?」
えっ、なんで先生はアタシがミエハルくんのことで迷ってるのをもう察知してるの?
「まず・・・山神とNが付き合っとることは、もう俺以外の先生らもみんな知っとる。だから、最初はNが卒業したから寂しくて、部活で落ち込んどるのかと思ったんよ」
「アタシとN先輩が付き合ってる事って、先生方みんな知っておられるんですか?」
「そりゃあ1年半か?付き合いだしてから。帰り道でお手て繋いで歩いてりゃ、先生方だって帰る時に目撃するよな。吹奏楽部の2人だから、先生方はみんな俺に聞きに来るしな。部活での態度とか見てたら、なるほどな、って分かっちゃうよ」
「そ、そうだったんですね…」
アタシは顔が真っ赤になっちゃった。
「でも先生、アタシがミエハルくんのことで悩んでるって、なんで分かったんですか?」
「ん?まあ部活内でのお前らの様子もそうじゃけど、ついこの前N自身が一度俺に会いに来たことがあってな、それで色々聞いたんよ」
「えっ、N先輩、何を話しに先生の所へ?」
「まあありがちなんじゃけど、なかなか高校に馴染めなくてどうすればいいか、ってな話と、吹奏楽部は上手くいってるか、彼女の様子はどうか、部長のミエハルは頑張ってるか、とにかく色んなことだよ」
そっかぁ、せっかく志望校に受かったのに、N先輩、馴染めてないんだ…。
「まあ高校はアイツのやりたい学科に行けたんじゃけぇ、その内慣れてくれよと応援するしかないんじゃが、なんとなくアイツ、お前とミエハルが付き合ってるんじゃないかって勘繰っててなぁ」
「ええっ、ミエハルくんとアタシがですか?」
「それで、部内でそんな様子はないですかと聞いてくるから、俺も気になったんじゃけど、お前達、付き合う以前に、全く最近会話すらしてないじゃろう?」
「…はっ、はい…」
「去年は結構、お前やTがミエハルを弄ったりして楽しそうだったけど、何か変なタイミングでもあったのか、最近はまったく会話もしとらんし、ミエハルに至ってはお前だけじゃなく、全く他の女子と喋ろうともしない。副部長のFともな…」
「・・・」
アタシのせいだ…。純粋で照れ屋なミエハルくんの心を傷付けちゃったんだ…。だから、女の子のことが怖くなっちゃってるんだ、きっと。Tちゃんのことも、もう諦めてるかもしれない…。
「何か、心当たりはあるか?」
「…はい…」
「良ければ、教えてくれ。勿論、誰にも言わんから。嫌なら、無理にとは言わない」
アタシは、去年の春にミエハルくんが途中入部してきたけど、今にも辞めそうな雰囲気だったから、辞めさせたくないと思って色々と話し掛けたことや、クラスでも吹奏楽部の練習に行きやすいように部活以外の事も話し掛けたりして、周りから見たらヘタしたらカップル?みたいな感じに見えたかもしれないということ、だからきっとミエハルくんはアタシのことを好きになってしまったのに、卒業式の日にN先輩に抱きしめられた瞬間をミエハルくんに目撃されて、落ち込んだミエハルくんの最後の言葉を聞いたこととかを、一気にY先生に喋った。
「…そっかぁ、そんな経緯があったんじゃのぉ。でも、ミエハルが途中入部してくれた時にケアしてくれたのは、俺は感謝しなきゃいけないことだな。俺もミエハルをバリサクに引っ張れたとはいえ、なかなか教えてやれんかったから、最初はアイツも孤独だったと思うし。でもNは何か言わなかったか?アイツ、嫉妬心が強いヤツだから、お前がミエハルを構うことを、よく思ってなかったんじゃないか?」
「はい、一度言われました。ミエハルのことはほっとけって」
「やっぱりな。だからアイツはトランペットがあれだけ上手いのに、周りに誰も寄り付かんのよ。教えてくれとか、普通なら後輩が聞きに行きそうなもんじゃけど、いつも一人で練習しとったからなぁ。トラブルもよくあったし」
アタシはTちゃんの天然パーマ事件を思い出した。思えば、あれが色々なことの転機だったのかもしれない。あれでアタシは、ミエハルくんがTちゃんのことを好きなんだと思ったし、Tちゃんもミエハルくんに恩義を感じて、気になる存在になった。
アタシも、ミエハルくんが頼もしく見えて、身近な存在だったから、いつの間にか心の中にミエハルくんが入り込んできて、友達以上の接し方をしちゃったから、ミエハルくんもクラスが一緒なアタシへと、好きな女の子の対象を変えてたのに、結果的には…。
「・・・」
「とりあえずNには、ミエハルは既に彼氏がいる女の子を奪うような奴じゃないって言っといた。吹奏楽部もミエハルなりに頑張ってるから、安心しとけとも言っといた。でも山神、本当のお前の気持ちはどうなんだ?」
「アタシは…」
アタシって今からどうしたいんだろう…。
(次回へ続く)
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これまで「M」と称してきました人間を、あだ名で書き改めるようにしました。ミエハル、つまり私のことです(/ω\)
今回のお話も、フィクション2割、ノンフィクション8割という感じですが、なかなか着地点が見えず、ご迷惑をお掛けしています。いましばらくお付き合い下さいませ(;´▽`A``
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