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子どもが増える“子育て支援”とは

助産師 Beniです。
助産師として働く中で、社会全体が女性の身体のことを理解できたら、
考え方や仕組みがアップデートされて、女性がもっと生きやすくなると考え、
日々考えていることや伝えたいことを綴っています。

今回は、今注目されている子育ての支援の「支援」に実際何が期待できるのか、どういうものが望まれてるのだろうか、について考えていきたいと思います。
現在、日本は少子化を爆走中であり、この少子化を止めるには子育て世代が子どもを産むことが必須です。
でも、子育てしづらいとされる現状は問題が山積しており、そこに向けた子育て支援が模索されています。

「支援」=力を貸して助けること(デジタル大辞泉(小学館))
よく聞く言葉としては「復興支援」「難民支援」「自立支援」などが挙げられます。
つまり、「手助けを必要とする人に向けて手を貸し助ける」ことで、対象者の境遇や状況の改善を図ることが支援だと言えるでしょう。
この力の貸し方には、環境整備や教育、物品・現金を渡す、など様々な方法があります。

私が小学校の時、社会の授業でアフリカの発達途上国の子どもたちの貧困についての授業がありました。
その際、話をしてくれた支援団体の男性の言葉が今でもとても印象に残っています。
「もし、お腹を空かせた子どもたちにハンバーガーをあげたらとても喜ぶでしょう。でも、ハンバーガーは食べたらなくなってしまいます。それに、ずっとハンバーガーをあげ続けることはできません。彼らに食べ物をあげる支援は、わかりやすくて簡単ですがそれは本当の支援とは言えません。
彼らが自分でお金を稼ぐことができる仕組みを作る、仕事を持てるようすること。
それによって彼らが自立できるようにすることが支援です。」

そのような視点で今話題となっている「子育て支援」の内容を見てみると、ハンバーガー的要素が目立つような気がします。
例えば、この4月から出産一時金が42万円から50万円に増額されました。
出産応援一時金・子育て応援給付金と称する計10万円分の給付も始まります。
子ども手当の所得制限が撤廃され、月ごとの支給金額がこれまでより増額となります。
現在妊娠中の我が家はそういった給付の対象に当たるため、有り難いな、と思います。
ただ、これらの制度により「これで安心して子育てできそう」という感覚になるか、というと正直なところ、不安は解決していないように思います。
まだまだ経済的には負担は大きいです。
それに、これらの給付金は継続していく保障はありません。

子育て世代の、特に、女性の雇用は厳しく、子育てをしながら働くことへの風当たりは強いものを感じます。
しかし、「子育て世代が経済力を高めることができる」。
これこそが少子化対策が急務で、且つ財源の乏しいとされる日本の子育て支援のカギであると考えます。
これができれば、いつまでもらえるのかわからない、或いは“一過性の給付金で一瞬喉の渇きを癒す”ような家計のやりくりから余裕が生まれてくるのではないか、と考えます。

求職の場面から既に風当たりの強さは感じられます。
知り合いの女性は、産後に職場復帰を考えて面接を受けた際、「子どもが熱を出した時どうしますか?と聞かれて、預けられない時には休むしかないことを話したらダメだった。いくつか(面接を)受けたけど、いつもそこがネックだった。」と話していました。
小さい子どもはよく熱を出すものです。
そのようなよくあることが“ネック”であること自体が子育て世代の雇用を厳しく、働きにくくさせている要因であると考えます。
子育て世代が自立して経済力を持つことができるためには、職場づくりが必須ではないでしょうか。
例えば、
・妊娠・出産により職場を離れても戻ってくることができる
・子どもが突然熱を出しても預け先が確保されている、もしくは、後ろ指を刺されずに子どもの看病に専念し職場を休むことができる
・母親だけでなく父親も同等に子育てに関連した休みが取りやすくなる
といった、子育てによってこれまで通りの働き方で就労することが難しくなる場合に、それらにより不遇な立場とならないことが保障されることが必要なのではないかと考えます。

ハンバーガーを求めているわけではなく、自分でハンバーガーを買い続ける力を持てるような支援を求めているのです。

1人の子どもが生まれて大人になるまでには長い年月がかかります。
だからこそ、一過性、単発、短期終わってしまう支援では支えきれない部分が出てきてしまうと思います。
当事者に「力」を与えることが持続可能で現実的な支援であるならば、これからの子育て支援には子育て世代に「経済力」を与える支援を強化してほしい、と考えます。


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