ないものねだり
ケニアの病院にいる中でこんな事例にあたることがある。
「お金がないから治療できない」
その中でもすごく悩ましいことがあった。
帝王切開後のママ。ベースとしてマラリア合併しており貧血気味。
帝王切開後数日経って、顔色悪いからもう一回Hb(貧血の数値)を見ようとなった。
そしたら5.5g/dl
医療従事者ならこの値のヤバさがわかるはず。
通常12-16g/dl
妊婦や褥婦になると10.0g/dl以上なら良い方。
それを大きく下回る値。
マラリア罹患しておりかつ出産後で血液失っているから、すぐにでも輸血しないとこのままだと亡くなる可能性もある。
輸血しようってなって家族に必要性伝えると
「お金払えないよ」って。
病院側としては助けたいけど、お金がなければ運営出来なくなる。
ここはプライベートホスピタルなので患者さんはお金を払わないとだし、病院も運営できない。
ドクターや病院長から無料で医療を受けることができるパブリックホスピタルに搬送しようと提案があった。幸いにも本人はケロッとしており搬送の時間なら持つと判断。
しかし他の意見があった。
仮にパブリックホスピタルに緊急で搬送できたとしても、すぐに見てもらえず亡くなる可能性があるということだった。パブリックホスピタルはスタッフ少ないうえに、患者さんがかなりいる。緊急とか関係なく治療受けるのに待たなければならないことが多々ある。この「待つ」の意味は数時間下手したら1日待つ必要があったりする。
それを見据えて搬送できるかとみんなでディスカッションになった。
もっと豊富な医療資源があれば、、、
もっと充実した医療制度があれば、、、
無料で救えるくらいの財源があれば、、、
どうしてもないものねだりを考えてしまう。
結局みんなの救いたい気持ちが一致し、
搬送せずにそのまま病院で輸血することになった。
これが正しい判断かはわからない。
病院も経営、お金で成り立っている。
これを続ければいつか病院自体が経営難でなくなってしまう。
そうすると不利益を被るのはその地域の住民。
でも今目の前で必死に生きようとする命を救いたい思いもある。
すごく葛藤する出来事だった。
救うにはお金がやっぱり必要。
救いたい気持ちだけではやっていけないのが現実。
まだまだ葛藤は続くけど
世界のすべてのママとベビーが安心して医療を受けられる未来が来るように願う。
私もその力になれるように自分の生き方を模索したい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?