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名刺代わりの小説10選

①おとうさんがいっぱい(三田村信行)

私の嗜好を決定づけた本。小学生の頃、学級文庫に置いてあった。
見事に引き込まれた。
日常に潜む非日常。得体の知れない恐ろしさ。
ある日家に帰るとお父さんが増えていた…という表題作の『おとうさんがいっぱい』の他、
夢と現実が曖昧になる『ゆめであいましょう』
いつもと違う帰り道を通ったらあるべき場所に家がなくなっていた『どこへもゆけない道』
鍵っ子のこどもが部屋から出られなくなってしまう『ぼくは5階で』
夫婦げんかをしたお父さんが壁の中に入って出られなくなる『かべは知っていた』
何度読んでも不思議で、怖くて、心細くて、切なくて、余韻の残るお話たち。

この本に出会ってからずっと私は「日常に潜む非日常」の小説を求めている。

②ようこそ地球さん(星新一)

小学5、6年生の頃だったか、両親に「星新一のショートショートが面白いよ」と薦められて、以来自分のお小遣いを星新一に費やすことになった。
短くて読みやすく、そして面白い。
中学生になってからは帰りの電車を待つ間に必ず本屋さんに寄り、新潮文庫から出ている星新一の作品は全て買ったし、古本屋で見たことのない本があればそれも絶対に買っていた。
私は作家買いタイプだが、そのきっかけとなったのも星新一だった。

そんな大好きな星新一の中で一番好きなのが『ようこそ地球さん』に収録されている『処刑』という話。

殺人犯が送られる赤い惑星。犯罪者は銀色の玉を1つ渡される。銀色の玉はスイッチを押すと水が出るので生きるためには必要不可欠だが、ある回数以上押されると内部の超小型原爆が爆発する処刑の道具でもある。

赤い惑星に送られたある男の焦りや苦悩を自分も一緒に体験しているような気持ちになる。
たった31ページのお話なのに、この世界にのめり込んでしまい、読み終えた後もしばらく戻ってこれなくなる。
男はどうなったのか?

これも私の大好きな余韻の残る話。

③三月は深き紅の淵を(恩田陸)

恩田陸は中学1年生のときに『六番目の小夜子』をドラマで観たのが知ったきっかけ。
原作を見つけて読んだらものすごく好みで、以来作家買い。学校帰りの本屋さんで常に探していた。
中高生時代に何度も何度も読み返して、余韻をずっと味わっていた思い出深い作家さん。今も好き。
その中で私が一番好きなのが『三月は深き紅の淵に』。ここから始まる三月シリーズもとても好き。
恩田さんの小説もなんだか不思議というか、得体の知れない怖さがあって読んでてゾクゾクする。
どこかにこんな話があるのかもしれない、こんな世界があるのかもしれないと思ってしまう。
『光の帝国 常野物語』もめちゃくちゃ好きで何度も読み返してボロボロになっている。

④夜市(恒川光太郎)

恒川光太郎さんは一番好きな作家さん。
これぞ日常に潜む非日常。ホラー&ファンタジーとよく言われている。
ホラーはホラーなんだけど、おどろおどろしいわけじゃなくて、なんだか不思議で切なくて胸がギュっとなるお話が多い。
勿論余韻も最高。道を歩いていて恒川作品の入り口になりそうな道を見るとドキドキしてしまう。
恒川さんの小説がツボすぎるので、何度も読み返す。
恒川さんっぽい小説を探して似た作風の作家さんや小説を調べて読んでみるもののやはり恒川作品とは違うので心を埋められないという。
新刊が出るのを待ちわびている。
『スタープレイヤー』シリーズも大好き。

⑤恋愛の国のアリス(嶽本野ばら)

ロリータが大好きなのです(休日ロリータやってた時期も少しある)。
野ばらちゃんのエッセイ、小説は独特な文体なのにスッと入ってきて読みやすく、お洋服周りの知識もガンガン入ってくる。
デザイナーさんの話、メゾンの特徴、興味が尽きず都度検索検索。お耽美で唯一無二。
『恋愛の国のアリス』は大学時代バイブルにしていて携帯電話の待ち受けにしてた。
行きづらさを抱える子がお洋服に出会って息ができるようになるような、なんていうか切実な話が多い。好き。
小説では『シシリエンヌ』『エミリー』が好き。

⑥青空チェリー(豊島ミホ)

女による女のためのR-18文学賞に外れナシ、と個人的に思っている。
その賞を知るきっかけになった豊島ミホさんはライトな文体で明るくカラッとエロく、そしてちょっと切なくて始めて読んだときに「すごい作家さんを見つけてしまった…!」としばらくドキドキが止まらなかった。
言語化が難しいんだけど、これまでに読んだことがなかったけど、私が読みたかったのってこういう話!って。
『青空チェリー』がというわけでなく、全体的に豊島さんの小説はスポットライトが当たる(いわゆる一軍の)子ではない子の話をすくい上げるというか、こういう子もいたんだろうな、私はこの子みたいだったな、こんな子いたな、というリアルさがあって、切なさが胸を締め付けて忘れられない。
小説家としてはもう引退されているけれど、今でも豊島さんの新しいお話がいつか読めたらなあと思っている。

⑦殺人出産(村田沙耶香)

10人産んだら、1人殺せる世界。
村田沙耶香さんは『コンビニ人間』を読んで以来追いかけている作家さん。
村田さんの作品の気持ち悪さってすごくて。この気持ち悪さが溜まらなく好き。
気持ち悪いのに目が離せない、理解できないけど理解できるような気がしてしまう、みたいな。
10人産んだら1人殺せるって、んなアホな、と思うけど読んでたらなるほどそういう考えもあるかぁ…いやいやないない怖い怖いみたいな気持ちになってくる。
独特の世界、村田沙耶香ワールド。大好き。

⑧新世界より(貴志祐介)

基本的に上下巻に分かれている本って好きじゃなくて。でもこの本は上下どころか上中下に分かれてる。
超能力を手に入れた人間が暮らす遥か未来の話。
設定がめちゃくちゃ作り込まれているのでこの世界のことが理解できて、ちゃんと頭に映像が浮かぶ。
不穏さがとても好み。この世界はどうなっているのか?ドキドキハラハラして一気に読んでしまう。
貴志祐介さんの小説は『クリムゾンの迷宮』『悪の教典』も大好き。

⑨自縄自縛の私(蛭田亜紗子)

こちらも女による女のためのR-18文学賞出身。特殊性癖の女性たちの短編集。
生きづらさ、切なさが根底にあるんだけど欲望の空恐ろしさも感じる。
泣ける、じゃなくて、泣きたくなるような切実さを孕んだ話が好き。

⑩ハニー ビター ハニー(加藤千恵)

大学途中くらいまではミステリかホラーしか読まない!恋愛小説は興味ない!って偏った嗜好だったけど、何がきっかけだったか加藤千恵さんの短編を読んで呼吸が苦しくなるくらいのリアルを感じた。
親友の彼氏と浮気したとか、実は二股かけられてたとか、そういう経験があるわけじゃないんだけど、登場人物の女の子が言うこととか考えることとかにうわぁ…って深く感じ入っちゃう。
以降恋愛小説も解禁。
加藤千恵さんの短歌も好きで、昔ハッピーマウンテンって短歌ミニコミに応募して2首かな?採用されたことがある。

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