110番

携帯の発信画面に110と入れては消した。  

発信を押しては消した。

電話口に相手が出ては無言で消した。       

住所を伝えた後、身体が震えて、でも大丈夫です、と言った。           

電話もらったから、行かないと行けないから、と言われて絶望した。 

チャイムが鳴って怖くて怖くて震えていた。    

階段ですれ違ったとき、怒りのこもったため息まじりに、お前が呼んだのか、と言われた。       

その後に吐き捨てるように言った言葉は聞こえなかった。        

ドアを空けると私服の男の人が3人いて、けいさつです、と言った。

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