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お弁当箱より大事なものという視点。

昨日夫が真っ青な顔で帰宅した。

「大変なことになった。」

そう一言。
その後なかなか口を開かない。


ようやく重い口を開いたと思ったら、お弁当箱を無くしたとのこと。

夫が東京転勤を機に、お昼はお弁当にするというので、自ら一式を揃え、ほぼ毎日持参をしていた。選び抜かれたお弁当セットに、長年愛用している食洗機に入れられる水筒が入っていた、大事な大事なランチバックだ。


妻「会社に置いて来たんじゃないの?」

夫「記憶にない。」

その日は会社のお客さんと飲み会だったので、どこかに置いてきたかもしれない。既に会食の店には問い合わせ済みで、置き忘れはなかったとのことだった。さすが夫、仕事が早い。

ちょくちょく会社のロッカーにお弁当を忘れるので、妻はどうせ会社に起き忘れたのだろうと思ったが、今回ばかりは違う様子。


私も人間なので、多少のイラっとはあった。
が、それ以上に夫が落ち込んでいる。

夫に出会ってから現在に至るまで、こんなに落ち込んでいる姿は見たことがない。ポジティブな性格にも関わらず。

そんな濡れた子犬に、さらに水をかけるようなことは、人間なので到底できない。

ーーー

そんなとき、昔出会った女性のことを思い出した。

彼女は大谷さんと言い、私と彼女は、京都の旅館で短期アルバイトをしていた頃に出逢った。年は60歳くらい。長い海外生活を送っていた、彼女の英語は、独特な訛りがあり、そこから知的さが滲み出でいた。

なぜここでアルバイトをしているのか、挨拶程度の会話と思い、軽い気持ちで尋ねた。
「ニュージーランドに住んでたんだけど、主人が亡くなり、気分転換に日本に来たの。」

死因は心臓発作。
亡くなった日は、いつもと同じように会社に出勤して行ったと言う。あまりにも急なお別れだった、と。「自分にも大事な人にも、明日が来るとは決して思わないこと」と教訓をいただいた。


大谷さんとの出会いから、「今」生きることの大事さを学んだ。

人生プランは数年、数十年で考えることもある。
でも、「今」この瞬間が大事だと言うことを忘れないようにしたい。

ーーー

だから、夫に伝えた。
「また買えばいいよ!今度は鞄に入る小さい弁当箱に、エアタグも装備してね。」と。

ただ毎日、家に帰って来てくれたら、それでいいなと思う。


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