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①笠原和善さん(枝豆農家)

みなさんこんにちは。

高山村には、面白いくらいに個性的な人がたくさんいます。今まで知っていながら実名を上げて発信することを躊躇していたのですが、素敵な人にはちゃんと光を当てたいなと感じるようになってきました。
そこで1〜2週に一度、高山村に住む人・関わる人にスポットライトを当ててインタビュー紹介していきます。

一人目は、高山村の五領地区に住んでいる農家・笠原和善さんのお宅にお伺いしました!

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笠原和善さん
と築62年の立派なお宅(使っている木材は全て笠原さんの持ち山から!)

緑のふるさと協力隊時代から何度もお世話になっているので顔馴染み。
主に出荷しているお野菜は、枝豆・さつまいもなどです(趣味で数多くの野菜を他にも作っています。)
夏は畑で農家、冬は山で林業をしています。


西山から見る笠原さんの魅力はなんといっても、超がつくほどの研究家

毎回お話しをすると、膨大な知識が飛び出てきます。
今回も1時間程度、林業のことから野菜の品種・農薬のことまであらゆることを教えていただきました。

農業や林業に興味のある方は、少し参考になるかもしれません。是非ご覧ください。


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ー 初めてのインタビューで慣れていなくて、手探りの状態ですがよろしくお願いします。

和善さん:知らねぇ仲じゃねぇからな(笑)

優しくフォローしていただきながら、ゆるっとインタビュースタート。
嬬恋の農家さんが冬スキー場に行っているなんて世間話をしながら、和善さんの冬の仕事のお話へ。

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インタビューに応じてくれた和善さん

冬の仕事 林業

ー 冬の山仕事は何をしてるんですか?
そりゃあ間伐とか色々あるんだよ。

ー どこかに木を出すんですか?
出さない。山に置くんだよ。間伐は結構、補助金が出るんだよ。

ー 搬出はしないのですか?
搬出はしない。間伐だから(出す時の道がくねくねして)大変なんだよ。

ー 木を売ったとしたらいい値段で売れるんですか?
1本〇〇円だろうな(笑)
搬出して渋川(隣の市町村)まで持って行って〇〇円だよ。

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資料を持ってきてくれて、木の値段を見せてくれました

ー えー!そんなんじゃ合わないですね!
だからさ。合わねぇって言ってんだよ。


いざ数字を聞くと驚愕です。そりゃあ林業も衰退していくよな。。

そして和善さんが上の木札を指差し「ほら!」

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和善さんは群馬県で山のエキスパートを養成するためにはじまった事業の一期生だそう

私が、緑のふるさと協力隊の時は農業のお手伝いをしていたので深く知りませんでしたが、農業だけでなく林業もかなり極めているようでした。。
話を聞くと、大学卒業後、奈良の吉野に枝打ち修行にいったことがあったらしく、その時の話を聞きました。

枝打ちは斧でやるんだけどさ、とげなくってさ〜。俺の師匠は、両手でやるんだよ(右側の枝は右手で、左側の枝は左手で落とす)。俺は両手でできなかったけど。枝打ちって、1mm内側に入ると木の皮を剥いちゃう。外側に1mmずれると節が残っちゃう。2mmの間に落とすんだよ。

ー へーそうなんやぁ、難しい。簡単に落としてるだけだと思ってた。。やっぱ色々あるんや。
そうさ。シビアなんだぜー(笑)


他にも、吉野の山奥では納豆を食べる習慣がないため高山に帰ってきてから真っ先に納豆を食べたことなど思い出話を面白おかしく話してくれました。


林業の話がひと段落すると和善さんが過去出荷していた、こんにゃくの話。

こんにゃくと品種

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(参考)こんにゃくの原料のこんにゃく芋

大阪は(こんにゃくが)赤くねぇんか?

ー いや、黒いこんにゃくですよ。

滋賀はこんにゃく赤いんだぜ。あれは地方性。東北の方は白いのが好きだぜ。関東とかは黒いのが好きなんだよ。
手作りこんにゃくは白いじゃん。食紅やひじきで色つけてるだけなんだ。
黒いのはさ、昔のこんにゃくぽくしてるんだよ。
昔のこんにゃくってのは品種が『在来種』つうん。『在来種』でつくると白くできねえん。歯触りが違うよ。ざらざらして。

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手作りこんにゃく(素人が作ったので崩れていますがこんな色)

一般的に今作られているこんにゃく芋の皮を剥くとこんな風に真っ白です

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ー 在来種はこんにゃくの中も黒いんですか?
そうだよ。

 へぇー!『在来種』と今のこんにゃくどちらがうまいんですか?
うーん『在来』の方がうめーんじゃねぇかなぁ。

ー 今、『在来種』をつくっているお宅はあるんですか?
(和善さん、自分を指差す)

思わず笑ってしまいました。
和善さんは、どんな野菜も数多くの品種を育てどの野菜が一番美味しいか、趣味で研究されています。

ー 『在来種』って言うのは一般的に言われる野菜の在来種とは違うのですか?
ちげーよ。品種の名前が『在来種』って言うんだよ。

というと本棚の中から、また本を取り出して品種の一覧を見せてくれました。

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こんにゃくの品種「在来種」「支那種」「備中種」「はるなくろ」「あかぎおおだま」

「はるなくろ」も、「あかぎおおだま」も、「みやままさり(こんにゃくの品種)」も支那種と在来種の掛け合わせなんだよ。基本的に。ハーフだよ。
耐病性があるとか、肥大性があるとか、生子(こんにゃくの赤ちゃん)がいっぱいつくとか、そのために何回も何回も掛け合わせるんだよ。


ここからいろんな野菜の品種の話になり、こんにゃくの域を超えた和善さんの超得意とする分野です。

種苗会社は商売だから。いいかげんなの売ればダメだよ。
いいかげんなのは✖️✖️種苗だけだ。
(←流石にここには名前出しませんw)

お決まりの口の悪さが出ましたが、これも笠原さんの持ち味。

(冗談混じりで)言ったんだよ✖️✖️種苗に。中途半端なの出しやがって!農家のこと考えてねぇ!

✖️✖️種苗が開発した美味しい品種なのですが、水圧の強い機械で消毒する時に枝が折れてしまったことがあるらしく、もう少し改良してから出してくれればよかったのにとのこと。

メーカーはいいものができちゃったもんで、ちょっとはいいかなぁって見切り発車で出しちゃったんだよ。普通はしねぇことなんだよ。

よく知ってるなぁ。
種苗会社と農家、いろいろあるんですね。。笑

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笑顔の和善さん(普段は優しいですよw)


なんでそんなに極めるの?

和善さんにずっと聞いてみたかったことを聞きました。

ー なんで品種や林業とか、全部極めようとするのですか?
知ってねぇと嫌なたちなんだよ。こんにゃくの特性とか知ってねぇと嫌じゃん。
農薬が一番そうだな。農薬なんて徹底的に覚えていないとダメだもんな。農薬ってちゃんとした知識がねぇと薬害(例えば枯れる)でるからね。

と、話は農薬の話に、、

ー この薬はこの雑草に効くと知っているということは、生えている雑草を見たら何かわかるんですか。
わかるよ。農家の基本だよ。雑草なんて農家との戦いだよ。みんな『農薬』を『農毒』のようにいってるけどさ。風邪ひきゃ薬を貰うようなもんだよ。だってさ、『農毒』じゃねえんだから『農薬』だで。

農家として、お仕事をされる中でプライドをもって勉強や研究を重ねながら作物を、作り続けている姿勢は本当にかっこいいと思いました。

真剣な話の後には、必ず気の抜けるような冗談が用意されています。

この間、Youtubeで面白いようなんやってたよ。「スギナを除草剤を使わないで枯らす方法」
すげーなーと思ってYoutubeで見たらバーナーで焼いてるんさ。そう言う問題じゃねぇだろ!確かに(薬は)使わねぇよなぁ(笑)

なんて冗談をいいながら2人で大爆笑。

そんなこんなで、1時間のインタビューを終えました。

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インタビューが終わると、自家栽培の畑に連れて行ってくれてスナップエンドウをお土産にいただきました。

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スナップエンドウを収穫する和善さん

また後日、写真を撮り直しに訪れると、「俺は変わった野菜しか育ててねぇんだよ」と話し、珍しい品種のカリフラワーをいただきました。

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いただいたスナップエンドウはおやつのように甘く、カリフラワーも味が濃くて美味しかった。ご馳走様でした。


インタビューを終えて

改めて、和善さんはすごいと思いました。
品種・雑草・農薬・機械、さまざまな知識を身につけ、
それにプラスして天候に左右されることもありながらおいしい野菜を作るための努力は惜しまない。

個人的に高山村で就農を希望する人は和善さんの話を聞いてもらいたいなぁと思いました。ここでは伝えきれなかったけど、品種のこだわりや試行錯誤の回数がすごいんです。
きっと参考になることがあるはず。和善さんの研究心と、仕事に向き合う真摯な姿勢が少しでも伝わってほしいです!

和善さん、お忙しい中時間をいただきありがとうございました。



読者のみなさん
拙い文章を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


次回は、高山村の飲食店「呑み喰い処 みょうが」店主、倉田雅美さんのインタビュー記事をアップしますお楽しみに!


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