傷つけたくなくて深く傷つけた#21 After story


3年経った。

あれからのぼるとは連絡取っていない。

のぼるから連絡があれば返そう、、と思ってた。やっぱり色んな記憶を思い出すのが怖かったから、自分からはしなかった。のぼるからも一度もこなかった。

3年間、ずっとなつくんのことを想っていた。

想えば想うほど、

なつくんの優しさ、誠実さ、笑顔が思い出されて、裏切ってしまった後悔が募った。

もう思い出しすぎて、理想のなつくんが私の中に存在している。

なつくんと行った場所、駅でなつくんを探してしまう癖がついていた。

もう大学3年も終わり頃、将来にむけてみんなが動き始めていた。

慌ただしい日々の中で、運動サークルだけは続けていた。

もうサークルの時間に遅れそうと思って主要駅の乗り換えで走っていた時、ちらっと見たカフェの中で見覚えのある茶色いふわふわの髪が見えた。

なつくん、、、だよね?

目が離せない。

何か必死に一人で書いている。

どうしよう、、、

こんなこともう二度とないかもしれない。

ドキドキして、心臓の音が聞こえる。

けど、一目でいいから会いたいと、ずっとずっと思っていた。

夢に見るくらい会いたかった。

引き寄せられるように、カフェの中に入る。

胸に手を置いて荒くなった息遣いを落ち着かせる。 

ゆう「なつくん、、?」

顔をあげた相手は、やっぱりなつくんだった。 

目は驚きが隠せないでいた。

なつくん「え、、久しぶり、うわー。」

少しだけはにかんでくれた。変わらない、笑顔。

広げていた手紙?みたいなものをさっと隠した。

勉強、ではないよね。

ゆう「久しぶり。彼女への手紙?」

来たはいいものの、話す内容なんて考えてなくて何話せばいいか分からなくて、直球で聞いてしまった。

なつ「うん、そうだよ。ごめん、恥ずかしいから見ないで。」

ゆう「あっ、ごめん、、。じゃあ、ごめんね、姿が見えてちょっと寄っただけだから、、ばいばい。」

なつ「うん、じゃあ、ね。」

前髪を直すことで顔を隠しながら、足早に歩いた。

目に涙がたまっていくのが分かった。

けど泣かない。

ずっと待っていた会える日が、やっときた。

何度も想像していた。

でもどんなに想っても、一回離れた心をもう一度引き寄せるっていうのは無理なんだ。

だってそれが、私の好きななつくんなんだもん。

想像していたよりずっとずっと距離が遠かった。

ゆうちゃん好きだよって言ってくれたキラキラな笑顔は、もう私には向けてくれない。

当たり前だね。

その対応に、改めてなつくんの誠実さを感じた。

なつくん、彼女できたね。

そりゃそうだよね。

本当の本当に、さよなら。

やっと自分も前に向かって歩いていく、いかなきゃいけないんだ。

もう想像のなつくんは探さない。

優柔不断な自分、寂しがりな自分、押しに弱い自分、、、

弱い自分のせいで3年間後悔していた。

弱い自分を自覚して、受け入れて、そんな自分の足で歩いて行こう。

あの日のような春の暖かい日差しの中を少し大きめの歩幅で歩き始めた。

バイバイ、なつくん。

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