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ほろ苦い思い出

私にとって高校野球は家のテレビで見るもの。

夏の暑い日に家族の誰がつけたかわからない

高校野球をぼんやり眺めているうちに

だんだん野球の世界に引き込まれて

勝手に応援してる。

ああ、惜しい

打った、走れ走れ!

試合会場には届くことがない声を

出している私にハッとするのだ。


私の通っていた高校はそれなりの進学校

だったので、高3の夏になると専門学校と

短大に進学する子以外は予備校に通っていた。


受験勉強するうちにわかったのは

私は睡眠時間が削れないのと体力がないこと

そして、本当は勉強があんまり好きじゃないこと

だった。


みなさんもご想像の通り

私の通っていた学校は当然高校野球が

強いはずなどなく、1回戦負けが当たり前

2回戦まで行くこと自体が奇跡だった。

3回戦まで行ったら10数年ぶりの快挙

という、高校野球に関しては淋しい状況。


だけど、野球部はイケメンが多かった。


野球は弱い、だけどイケメンを狙った女子が

野球部マネージャーとチアリーディングに入部する

のだけど、見るからに目的はイケメン。


彼女たちは野球やチアリーディングを真剣にやる気がないのを

側から見ている私でもわかったので、そんなにイケメンが

いいのかぁ・・・と眺めていた。


私たちに高校3年の夏が来る。

ちょうどその頃、センター試験の数学1Aの模試の結果が返って

きており、模試の時点で35点しかなくて、

数学のない学校を受験するか迷っていた。

野球で言うと誰も塁に出ていない状態の

ツーアウト。このままだと点が入らない、現役合格が

ちょっと難しそうな雲行き。


私の心が曇っていた時に

夏の高校野球地区予選 一回戦が学校の近くで開催される

ことが決まり、学年全体が盛り上がっていた。


私はみんなで試合会場に会場に出向き

野球の応援をするより家でゲームしている方

が好きなので遠目に盛り上がる人たちを

見ていたが、野球部のイケメンが私に向かって

「お前も一回戦応援に来てくれよ」

と社交辞令で声をかけてきたが、私は気のない声で

「うん、考えておくね、試合頑張ってね」

と返事をしたのだけど本当は行く気などなかった。


マネージャーやチアリーディング、吹奏楽部が

勢揃いなので、私などお呼びではない。


高校野球地区予選第一回戦の日は偶然

土曜日が試合だったから、観客が集まることは

目に見えていて、彼らは華々しく引退試合を行うの

だと信じて疑わなかった。


月曜日に学校に行くと

野球部のイケメンが二回戦進出が

決まったと嬉しそうだけどどこか

困った表情をしている。

「なぁ、二回戦応援に来てくれよ」

前より真剣な声で野球部のイケメンが私に声を

かけてきたが、案の定私は

「その日、予備校があるから行けないよ。

ごめんね、二回戦頑張ってね。」


事実を伝えたら、

「そっか、そうだよなー・・・

ありがとよ」

ちょっと泣きそうな声で返事が来て何が

勝ったのに何で悲しげなのかイケメンに聞いた。


「二回戦はプロ野球をやる球場で試合が出来るんだ。

プロと同じマウンドに立てるのは夢のようだけど

俺たち誰も一回戦、まさか勝てると思ってなかったけど

みんなも同じこと思ってたから

吹奏楽部もチアリーディング部も二回戦目の日のこと

考えていなくて、どちらも来れないってさ

みんな受験があるから仕方ないよな。」


勝って嬉しいはずなのに、悲しそうなイケメンを見て

私はなんと言葉を発するか迷ったけど、

吹奏楽部とチアリーディング部のことを薄情だと

感じたのは今でもハッキリ覚えている。


結局自分の都合なのか。

イケメン狙いの女子たちは

イケメンとお付き合いしたいから応援できる部活に入り

3年間のうち、狙い通りお付き合いして、別れて・・・

それはそれとして、本当にイケメンが応援に来てほしい時には

自分の都合を優先させるのか・・・


イケメン野球部は試合相手の声援だけが

鳴り響くマウンドの中コールド負け。

相手は県優勝を何度もしている強豪校

応援の層も厚いし、応援に対する気合いから違っていた。


#高校野球の思い出

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