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凍てつく夜にはかまたまうどんを


 氷雨が降り注ぐ午前一時。暖房を切った凍てつく部屋で、ひとり中年男性が腕を組んで白い息を吐きながら立ち尽くしていた。僕だ。明日は休みだから夜更かしでもしようと思っていたが、どうにも仕事の疲れからか早々に寝入ってしまった。

 寒さと空腹が身を絞っていくが、今から外出するのも億劫だし、この時間にカップ麺というのはたるんだ体を見るに我慢したいところではある。

 そうだ、かまたまうどんだ。昔イシヤマアズサさんが出した「真夜中ごはん」というマンガに載っている、冷凍うどんで作るレシピを思い出す。

 レシピ、というには大袈裟なほど簡単な作り方。カチカチの冷凍うどんを水にさっとくぐらせ、どんぶりに入れてバターと卵を落としてレンジで二分。

溶けたバターに、とろりと熱を抱いた黄身を混ぜ混ぜしたら、あとはめんつゆでもかけていただく。これだけだ。暖かいバターと黄身、それにめんつゆが溶け合って、これがなんともうまい。

 いいねいいねと意気込んでさっそく冷凍庫をごそごそする。あれ?なくない?うどん、あれ?この前買ってたよな?ごそごそを繰り返しても見つからない。あれ?

 あ!そうだ!この前みんなと鍋やったときに〆で食ったわ!ああ!ああ……じゃあ、ないのか。僕は再び腕を組んで悩み出した。この雨の中うどんを買いに外へ?馬鹿げている。なあそうだろう?

僕は自らのおなかへ話しかけると彼は大きな声で「はよ買ってこい」と返事をした。僕は急いで上着を羽織り、かちこちに冷凍された道へと飛び出した。

あなたのそのご好意が私の松屋の豚汁代になります。どうか清き豚汁をお願いいたします。