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ニキの屈辱② 出会ってよかった2人

前回の続きです。(ネタバレ含みます)

恋愛は、終わりよければすべてよし、と個人的に思っているが、『良い終わり方』というものはひとつとは限らず、様々な形があるのだ。
『良い終わり方』のひとつとして、《お互いを高め合う出会い》というものがある。
わかりやすい例でいうと、お付き合いし、結婚せずお別れしてしまったが、恋愛関係を築くことで、愛の素晴らしさを知った。とか。

ニキと加賀美は、出会って幸せだったのだろうか?
答えは、イエスだ。
最後のシーンで、それは明確になる。読み手だけでなく、ニキと加賀美も、それを知ることになる。

加賀美が、恋人だった頃のニキを撮影した写真を、ニキに見せるシーン。
そこに写し出されていたのは、冷たく見栄っ張りな感じでもなく、甘く可愛い感じでもない、ひとりの人間としての、ニキ。写真を染める光。

人間も光なのだ。

加賀美はそう思った。
ニキは恥ずかしそうにその写真を眺め、涙を流した。
人間として写し出された自分を見て、加賀美に愛されていたこと、加賀美を愛していたこと、2人は恋愛関係を築いていたことを知ったのだ。

加賀美は、ニキと出会い、高技術に触れ、カメラの腕をめきめき上げた。写真の素晴らしさを知った。
ニキは、加賀美と出会い、恋愛に奥手なりに愛を伝えながら、《写真家 ニキ》ではない、ひとりの女性としての生きる喜びを知った。

2人は出会ってよかったのだ。そして、そのことに2人は気づくことができた。
ある種のハッピーエンドだ。
この2人、既視感があると思いきや、ララランドのミアとセブだ!
女優を志すミアと、ジャズピアニストとしてお店を開くことを夢見るセブ。2人も、最後は別々の道を歩むが、出会いがきっかけで夢を叶えることができた。

互いの寂しさを埋めるだけより、こんな風に、互いを高め合える2人は最高である。
そして、そんな人は、恋が実らなくとも、忘れられない人になるだろう。


以前失恋してしまった彼は、私に大きな影響を与えた。
直接夢を応援する言葉をかけてくれたわけではない。そもそも、彼は私がこれから企むことなど何も知らない。これは、彼に限らず。(すごいビッグな発言だな)
彼と出会って、人を好きになる素晴らしさを知った。初恋ではないが、ここまで人を好きになるとは初めてだ。
と、キザな台詞を伝えることはなくなってしまったのだが。
好きな人は作品にしたくなる。これは、以前noteでちょっとお話した。
彼のことを書きたい!ただ、ノンフィクションを綴るのは、彼が嫌がるだろうか。
彼との時間を元に、何か作品を作りたい。
物語を作成したい、という気持ちは以前からあったものの、ようやく踏み込めたのは、彼のおかげだ。

私は、田舎の片隅の、どこにでもいる会社員で、執筆で生計を立てているわけでもなく、自分の作品を世に送り出したことは、ない。賞をもらった、といっても、学生時代の読書感想文くらい。
生きているうちに、自分の作品を、誰かに届けることはできるだろうか。
余命が僅か、といった心配事ではない。作品を送り出すことは夢のまた夢で、非現実的だと感じているのだ。
それでも、書いてみよう!と踏み込めたのは、彼との出会いがあったからだ。
まず、短編から書いてみよう。並行して、noteで日々の出来事、小説や映画の感想分を綴ろう。そのために、たくさんの作品に触れよう。

そんな日々から3カ月程が経過した。
実際、進捗状況は、思わしくない。
noteは仕事の休憩中に進められるとして、小説は休日くらいしか書けず、自分の時間の使い方が下手なせいで、短編一本終えたくらい。二本目がそろそろ終わりそう、でも他にも書きたい話あるし、、、と、まあ、進まない。仕事と執筆作業を両立している人って、すごいよな、、、。

出会ってよかったのだ。ニキも、加賀美も、私も。
これはハッピーエンド。あとは、形にするだけ。

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