佐藤涼子

所属結社:塔短歌会、澤俳句会、蒼海俳句会 超結社で参加:アルデバラン歌会、仙臺俳句会 …

佐藤涼子

所属結社:塔短歌会、澤俳句会、蒼海俳句会 超結社で参加:アルデバラン歌会、仙臺俳句会 販売中の本:歌集『MidnightSun』(書肆侃侃房)、合本『3653日目〈塔短歌会・東北〉震災詠の記録』(荒蝦夷)

記事一覧

小田桐夕歌集『ドッグイヤー』

小田桐夕さんの歌集『ドッグイヤー』読了。小田桐さんの作風は詩人タイプでありながら、観察や描写の細かさは俳人の眼という印象を受けました。小田桐さんの実際の性格は知…

佐藤涼子
2週間前
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塔六月号作品2小林信也さんの選歌欄から五首選

塔六月号作品2小林信也さんの選歌欄から五首選んでみました。 むなしさはむなしいままでいいのだと心の沼を温めている   若山雅代さん 耳うらにマスクの白いひものあ…

佐藤涼子
2週間前
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塔六月号作品2なみの亜子さんの選歌欄から五首選

塔六月号作品2なみの亜子さんの選歌欄から五首選んでみました。 絵をまへに人は鱗をなしてゐてわたしが立つのは尾鰭のあたり   森山緋紗さん 三月の冷たい雨を帰りき…

佐藤涼子
2週間前
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塔六月号作品2岡部史さんの選歌欄から五首選

塔六月号作品2岡部史さんの選歌欄から五首選んでみました。 ちゃんと生きます再配達も受け取ります三分過ぎたカップヌードル   仲原佳さん 古代メキシコ展に佇むこれ…

佐藤涼子
2週間前
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塔六月号若葉集から五首選

塔六月号若葉集から五首選んでみました。 わたくしの臓器はこんなにピンク色 明るい服を着ようと思う   片山裕子さん 自己紹介代わりに今日の勝敗を告げてはじまる吟…

佐藤涼子
2週間前
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塔五月号月集から十首選

塔五月号月集から十首選んでみました。 とどのつまり湖と思はば湖である鳥のあつまるわが胸のうち   梶原さい子さん   湖=うみ 会えばまたご飯食べたか母は訊くオ…

佐藤涼子
2週間前
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塔五月号作品1小林信也さんの選歌欄から五首選

塔五月号作品1小林信也さんの選歌欄から五首選んでみました。 肌をなでる風に季節はうつりゆく 忘れてないは言い訳でした   神山倶生さん ポケットから昨夜のままに…

佐藤涼子
2週間前
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塔五月号作品1栗木京子さんの選歌欄から五首選

塔五月号は故藤井マサミさんの追悼特集号です。亡くなった後、これほど多くの方々に作品や人となりを褒めてもらえるのは羨ましい反面、亡くなってしまった後だとどんなに良…

佐藤涼子
2週間前
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塔五月号作品2永田和宏さんの選歌欄から五首選

塔五月号作品2永田和宏さんの選歌欄から五首選んでみました。 梅田だから「動く歩道」にあるかぬひと一人もなくていたら旅人   東大路エリカさん まなうらの夜風に触…

佐藤涼子
2週間前
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塔五月号作品2なみの亜子さんの選歌欄から五首選

塔五月号作品2なみの亜子さんの選歌欄から五首選んでみました。 いい具合にいろあせているポスターの田中邦衛はジョッキを上げて   浅井文人さん どうなっても幸せに…

佐藤涼子
1か月前
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塔五月号作品2前田康子さんの選歌欄から五首選

塔五月号作品2前田康子さんの選歌欄から五首選んでみました。ヤスイシンゴさんの作品は誤植のような気がしないでもありませんが、そのまま書き写します。 焦土から指のか…

佐藤涼子
1か月前
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塔五月号作2永田淳さんの選歌欄から五首選

塔五月号作2永田淳さんの選歌欄から五首選んでみました。 やめてゆくためにはじめるいくつかのタスクいづれも冬の期日の   浅野大輝さん あくまでも個人の意見として…

佐藤涼子
1か月前
4

塔五月号作品2山下泉さんの選歌欄から五首選

塔五月号作品2山下泉さんの選歌欄から五首選んでみました。 結婚がちらつく朝に早退をしてまで見たい海のあること   宮下一志さん 「清冽の冽子」と名を告ぐ人に会い…

佐藤涼子
1か月前
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贅沢な花

贅沢な花         佐藤涼子 ぱきと噛むセロリ水辺に生えていた前世の記憶を青く匂わす 正中を流れる川が速すぎて拳で叩けば胸骨の音 閉架式書庫に抱きあう僕た…

佐藤涼子
1か月前
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BUCK-TICK

 BUCK-TICKのボーカル櫻井敦司がライブ中に体調不良を訴えて救急搬送され、五時間後に逝去した。五十七歳だった。三十数年前のラジカセのCMで「重低音がBUCK-TICKする」…

佐藤涼子
1か月前
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塔五月号作品梶原さい子さんの選歌欄から五首選

塔五月号作品梶原さい子さんの選歌欄から五首選んでみました。 給料と比例はしない幸福度毎日泣かずに着替えができる  山河初實さん 細き指の骨を拾いて撫でてやる吾子…

佐藤涼子
1か月前
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小田桐夕歌集『ドッグイヤー』

小田桐夕さんの歌集『ドッグイヤー』読了。小田桐さんの作風は詩人タイプでありながら、観察や描写の細かさは俳人の眼という印象を受けました。小田桐さんの実際の性格は知りませんが、作品全体的に隙がなく、かなり几帳面で真面目な性格の主体であるという印象を受けました。
私は観念や比喩を駆使した作品より、素材の鮮度で勝負するような生っぽい短歌が好きですが、小田桐さん夕の短歌に限って言えば、実生活が推測できるよう

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塔六月号作品2小林信也さんの選歌欄から五首選

塔六月号作品2小林信也さんの選歌欄から五首選んでみました。

むなしさはむなしいままでいいのだと心の沼を温めている   若山雅代さん

耳うらにマスクの白いひものあり〈月の光〉を聴きつつゆらぐ  浅井文人さん

喧嘩ならいつでも買うわ幾らでも代わりに倍値でメルカリで売る   間之口葵一さん

とりあえず土産物屋を二周していつかも買った菓子に落ち着く   則本篤男さん

雨音に目覚めたるけふ夕過ぎて

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塔六月号作品2なみの亜子さんの選歌欄から五首選

塔六月号作品2なみの亜子さんの選歌欄から五首選んでみました。

絵をまへに人は鱗をなしてゐてわたしが立つのは尾鰭のあたり   森山緋紗さん

三月の冷たい雨を帰りきてビニール傘にしろい花びら   竹内亮さん

たちつてと良いお知らせは特になく早々に去るたちつて、ととと   仲町六絵さん

意味という意味のすべてを午後にして鼻腔にすこし季節がひらく   日下踏子さん

目を閉ぢてただ野の鳥の声を聞く

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塔六月号作品2岡部史さんの選歌欄から五首選

塔六月号作品2岡部史さんの選歌欄から五首選んでみました。

ちゃんと生きます再配達も受け取ります三分過ぎたカップヌードル   仲原佳さん

古代メキシコ展に佇むこれまでの滅亡とこれからの滅亡   いわこしさん

友だちは要らなくなったわたくしに時どき山が笑ってみせる   海野久美さん

エアコンの風にひねもす揺れるなり赤い造花は満開のまま   谷活恵さん

コンビニが点々とある我が町で何種類もの水

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塔六月号若葉集から五首選

塔六月号若葉集から五首選んでみました。

わたくしの臓器はこんなにピンク色 明るい服を着ようと思う   片山裕子さん

自己紹介代わりに今日の勝敗を告げてはじまる吟行句会   音羽凜さん

桐島はどんな気持ちで見てたらう己が笑顔の手配写真を   城下令夜さん

利用者が跨がないよう足型をフットセンサーに描くのも仕事   川上美須江さん

胸の奥から海の匂いが漂って「ああ今から泣く」と分かった   

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塔五月号月集から十首選

塔五月号月集から十首選んでみました。

とどのつまり湖と思はば湖である鳥のあつまるわが胸のうち   梶原さい子さん   湖=うみ

会えばまたご飯食べたか母は訊くオルゴールの螺子を巻くように   上條節子さん

動物は死ぬとつらいし植物は枯れるとつらいからとあなたは   大森静佳さん

「うたびとが集まるところ」というところやりたかったな酒などだして   数又みはるさん

ただじつと見てばかりゐた

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塔五月号作品1小林信也さんの選歌欄から五首選

塔五月号作品1小林信也さんの選歌欄から五首選んでみました。

肌をなでる風に季節はうつりゆく 忘れてないは言い訳でした   神山倶生さん

ポケットから昨夜のままに取りだして朝のホームに手袋はめる   伊東文さん   昨夜=ゆふべ

我の名にまとめられたる報告書我が名の明朝体の静けさ   本田光湖さん

時刻表に「時々」とのみ書かれいるバス停ありて桃は満開   杜野泉さん

われの一世にやさしい嘘

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塔五月号作品1栗木京子さんの選歌欄から五首選

塔五月号は故藤井マサミさんの追悼特集号です。亡くなった後、これほど多くの方々に作品や人となりを褒めてもらえるのは羨ましい反面、亡くなってしまった後だとどんなに良いことを言ってもらっても自分では読めないのでもったいない気もします。というわけで、私のことは亡くなってからは黙殺でいいので、生きているうちに褒めてください。

私も藤井マサミさんの短歌2首紹介します。

半額のオギノの夏服着てオギノへ又買い

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塔五月号作品2永田和宏さんの選歌欄から五首選

塔五月号作品2永田和宏さんの選歌欄から五首選んでみました。

梅田だから「動く歩道」にあるかぬひと一人もなくていたら旅人   東大路エリカさん

まなうらの夜風に触れる心地してやり直せないこともしようか   杜崎ひらくさん

自転車のカゴに揺られて混ざりたりドレッシングは砂利道を行く   増田美恵子さん

子の寝顔見れど疲れは吹き飛ばず倒木のごと重たきからだ   松本志李さん

バンザイの形に晴着

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塔五月号作品2なみの亜子さんの選歌欄から五首選

塔五月号作品2なみの亜子さんの選歌欄から五首選んでみました。

いい具合にいろあせているポスターの田中邦衛はジョッキを上げて   浅井文人さん

どうなっても幸せになりたかったと思うのだろう 水になりたい   机さん

俳句短歌余技文芸と思へども歌人を任ずる人に言ひ出せず   藤原學さん

アレクサが死にたいと聞けばゆっくりといのちの電話読み上げている   山崎杜人さん

茅門を潜るきざはし緩やか

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塔五月号作品2前田康子さんの選歌欄から五首選

塔五月号作品2前田康子さんの選歌欄から五首選んでみました。ヤスイシンゴさんの作品は誤植のような気がしないでもありませんが、そのまま書き写します。

焦土から指のかけらを掘り起こし夫と言い切る自信我なし   かみくらめぐみさん

とんかつに五目ごはんを付けて出す時々母はそんなことする   峠秋太郎さん

時給より高き海苔巻き頑張りて恵方はあちらと君が指差す   ヤスイシンゴさん

帰りきて厨にやすら

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塔五月号作2永田淳さんの選歌欄から五首選

塔五月号作2永田淳さんの選歌欄から五首選んでみました。

やめてゆくためにはじめるいくつかのタスクいづれも冬の期日の   浅野大輝さん

あくまでも個人の意見として話すときだけグラスの氷は饒舌   君村類さん

他人の話にひたすに足組み直す市の公園の昼をながめて   豊冨瑞歩さん

朴の葉の白き葉裏を教えつつ何も否まず息子と歩めり   鈴木健示さん

塔五月号作品2山下泉さんの選歌欄から五首選

塔五月号作品2山下泉さんの選歌欄から五首選んでみました。

結婚がちらつく朝に早退をしてまで見たい海のあること   宮下一志さん

「清冽の冽子」と名を告ぐ人に会い「瑞穂の国の瑞子」と返す  平田瑞子さん  冽=れつ、瑞=みつ

半透明の傘の向かを見るやうなものかも知れぬ美しき過去は   向井ゆき子さん

矢のように行き交う人の感情を引き受け東京駅は佇む   月下香さん

かりかりとサランラップの

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贅沢な花

贅沢な花         佐藤涼子

ぱきと噛むセロリ水辺に生えていた前世の記憶を青く匂わす

正中を流れる川が速すぎて拳で叩けば胸骨の音

閉架式書庫に抱きあう僕たちがひとつの冷たい書架となるまで
                                 
アンドロギュノスの一生を緑の葉の上で終える蝸牛にきゅうり食わせる

守られているのはどちらに居る側か 基地をフェンスで隔てる街に

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BUCK-TICK

 BUCK-TICKのボーカル櫻井敦司がライブ中に体調不良を訴えて救急搬送され、五時間後に逝去した。五十七歳だった。三十数年前のラジカセのCMで「重低音がBUCK-TICKする」と言っていた派手なヘアメイクのバンドを覚えている方もいるだろう。
 BUCK-TICKは一九八七年デビュー。この時期、私は「パチパチロックンロール」「アリーナ37℃」等の音楽雑誌を熱心に読んでいたので、BUCK-TICKの

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塔五月号作品梶原さい子さんの選歌欄から五首選

塔五月号作品梶原さい子さんの選歌欄から五首選んでみました。

給料と比例はしない幸福度毎日泣かずに着替えができる  山河初實さん

細き指の骨を拾いて撫でてやる吾子の弾くベートーベンが大好きだった   森雪子さん

どこまでも行けそうはやく走れそう そんな靴なんかもういらない   竹垣なほ志さん

暴力の歌だと言つて花を詠みしとある歌人の「花」をし思ふ   宮本背水さん

金魚にもイジメがあるとい

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