脚フェチにとって夏は天国なのか?



腰痛がひどい。猫背を直そうと仰向けに寝転がり背中の下にペットボトルを入れている三十路の僕を、煙草で黄色く変色したゴミ部屋が一層と憂鬱に見せるらしかった。腰の痛さでうう…と呻く僕はさぞかし滑稽であろう。どこで間違えたのだろうか、ペットボトルの位置を肩の付近に移動しながら頭をひねった。僕の人生での間違い。そんな事を考えると、そもそも産まれたことそれ自体が間違いなのではないかと身も蓋もない事を思いつくが、そんな事を言っても仕方がない。単細胞生物が陸に上がるように進化した事に対してなに軽率に「俺たち増えようぜ!進化しようぜ!」なんてやってんだ。単細胞生物のままだったら不幸な思いも戦争も無いんだよ!と古代生物の軽率な未来視に心の中でぶつくさと言いながら、そろそろ本格的に痛いのでペットボトル修行をやめることにした。時計を見ると10時近い。僕は財布とスマホをポケットに入れて靴を履き外へと出かけた。先日のニュースで関東も梅雨に入ったらしく、曇り空がどんよりと重い蓋のように世界を覆っている。病院へと向かうバスはすぐに来た。バスに乗ると優先席が空いていたので、これ幸いと座った時にお爺さんに横目で見られた。いや、違うんです。僕は心の病気なんですよ!と釈明したかったが、そんな元気があるならそもそも精神病院には行かないのでニッコリと笑顔で会釈して好青年ぶりをアピールしてみた。そんな僕の努力も虚しく、お爺さんは既に手元の本を読んでおり、僕はニッコリと虚空に会釈するただの精神異常者であった。診察は「いつも通りで出しますね」の30秒で終わり薬局で薬をもらってそそくさと帰路に着く。そんな一日の始まりであった。ああ、誰か殺してくれ。それか黒タイツ食べさせてくれ。女子高生のが良いな。女子大生でも、女子ならなんでも良い。ワガママなんて言ってないのにな。脚フェチにとって夏は天国なのだろうかと高尚な哲学的思想を考えているとそろそろ家に着く。もう一度言う。誰か殺してくれ…。

この記事が参加している募集

ほろ酔い文学

学問への愛を語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?