見出し画像

金大偉監督『天空のサマン』が7/21(金)より「アップリンク吉祥寺」で初公開!

中国遼寧省生まれ。父は満洲族の中国人、母は日本人というバックグランドを持ち、ミュージシャン/映像作家として多彩な活動を展開する金 大偉。ミディからも数多くの作品をリリースしています。

金 大偉氏 画像提供:TAII Project

そんな彼が監督した、満洲サマン(シャーマン)の最新映画『天空のサマン』7月21日(金)より東京の「アップリンク吉祥寺」で初公開されます。舞台挨拶は、7月21日(金)、22日(土)、23日(日)、28日(木)、29日(金)、30日(土)を予定。順次に京都、大阪、名古屋、横浜などでも公開予定です。

制作に約9年間を費やし、金氏のライフワークとも言えるこの映画は、失われゆく満洲族の伝統文化についてのドキュメンタリー映像詩となっています。


プレスリリースの内容

映画「天空のサマン」について

中国史上最も広大な領土を誇った最後の王朝である清帝国。ベルトルッチ監督の映画『ラスト・エンペラー』では、絢爛豪華な宮廷文化が描かれ、強いイメージを残した。

この清帝国を築いたのが満洲族であり、現在の人口は約1.100万人。消滅の危機にある文化遺産の一つとも言われる満洲語をネイティブで話せる人は、もはや10数名となった。また彼らの信仰であるシャーマニズムの伝統、サマンの儀式や祭りも、限られた僅かな村に残るばかりとなった。そこでは、サマンたちが次世代へ繋ぐ祈りが行われている。

サマン太鼓のリズムが人類の原点の記憶を呼び覚ます!

この作品は、満洲人の父と日本人の母を持ち、音楽家でもある監督自身がカメラを手に、失われゆく貴重な満洲文化の伝承に奮闘する人々の姿を追い求め、中国各地を旅する。壮大な自然、儀式でサマンが天に祈る姿、神聖な境界へと導く太鼓のリズム。皆が感謝に満ちる瞬間。生き生きとした神歌や踊り。受け継がれた精神を語る穏やかな表情も映し出す。そのサマン太鼓の響きが人類の原点にある記憶を呼び覚ましてくれるのだ。

時代は「天地人」を繋げる力を必要としている

混沌とした現在社会において、シャーマニズムは、人間の霊性を維持し、その見えない世界において新しい知恵となり得るのではないか。時代は「天地人」を繋げる力を必要としている。自己のアイデンティティーを知り、自民族の文化の魂や精神を探求することが、あらゆる文化の理解を深める上で非常に重要なことであると考えられる。また、この映画は、それぞれの固有の文化を後世に遺すため、伝承や継続に関わるすべての民族世界への警鐘となり得るかも知れない。

満洲サマンの最後の祈りが見えてくる

本作品は、前作『ロスト マンチュリア サマン』(2016)に引き続き、現存する満洲サマンたちの思いや考え方について記録し、再び彼らが天神へ祈るために行った貴重な儀式の模様をカメラに収めることができた。その代々受け継がれてきた伝統儀式は、満洲族の魂や精神であり、自己再生へのアプローチであり、失われゆく文化を守るための意志でもあったに違いない…と思った。
私はできる限り、その儀式の流れを追って撮影し、その記録を映画に納めていった。
満洲の伝統文化を求めて、約9年間の時間を経て、様々な困難を乗り越えて、ついにこの映画が完成した。大きな視点から見れば、私の内面も大きく変化したのであろう。失われゆく満洲サマンの世界や失われゆく満洲語の世界において、もう二度と撮れない貴重な映像を撮影出来たことによって、自分の存在意味及び民族の存在意味と在り方が段々見えてくる。
 
また映画の中で使用されている音楽は、現地でサマンたちの神歌や子守唄のパーツを録音し、再構成や再作曲によって新しい楽曲が生まれた。ある意味で未来へと繋がり、文化の伝承作業を果たすことが出来たと思う。
 
こうして、失われゆく満洲シャーマニズムを辿る旅を通して、映画の制作全体を通して、作品の中に、私の思いだけではなく、参加した全ての人々の思いをも込められている。作品を制作すること自身は、一種の共同体の融合であり、調和と共存と共生の行為であり、多くの異文化を理解するための重要な手掛かりであるとも言える。
 
カオスと化した先の見えないこの時代に、満洲サマン文化だけではなく、ユーラシア大陸全体の視野からみれば、サマンの伝統文化が変容し、失われつつあるのだ。それでも微かに、天と人間を繋ぐサマンの力が残っているようにも見える。天空の光が煌めく中において、人々が幸福のため、天空の神々や先祖から啓示を受ける時に、満洲サマンの最後の祈りが見えてくる。あるいは最後の魂の叫びが聞こえてくる。

ー金大偉(監督、音楽、撮影、製作)

映画『天空のサマン』 各界のコメント

「ぼくは満洲育ちでありながら、満洲族の文化について考えたこともなかったことを今、恥ずかしく思います。人類の原点に迫ろうとする金大偉監督の偉業に敬意を表しながら拝見しました。」
ー山田洋次(映画監督)

「前作『ロスト・マンチュリア・サマン』に引き続き、満洲族の血を引く世界的なアーティスト金大偉さんが、僅かに残るサマン教の儀式を求めて、中国東北や新疆や内モンゴルを何年にもわたって取材、その神歌と踊りの貴重な映像を自らのナレーションで芸術の域へと高めていく。満洲語のサマンこそが英語のシャマニズムの原語であるのに、サマン文化が生み出されたその地で、天と人を仲介する霊性を重んじる伝統が滅びようとしている。」
ー宮脇淳子(東洋文庫研究員・モンゴル学者)

「世界中の先住民や亜細亜に通底する精神世界は自然界との共生であり人間はその恩恵により生かされている事が基本である。 この映画に映し出される営みが絶え間無くこれまでの何千何万年の時をこれから先も刻み続ける事が出来るように祈りを捧げます。 そこには理屈を超え目で見える世界はほんの一部であることを知らせてくれています。 この映画は普遍的価値に基づく営みを忘れない警鐘となります。」
ー大倉正之助 (能楽師 大鼓奏者 文化庁 日本遺産大使 重要無形文化財総合指定保持者)
「金大偉氏の作品を見ると、自分が宇宙の長い時空の中で、ほんの一瞬の生命を頂いて生きていることを、改めて知らされる。
そして森羅万象を身をもって語り継ぐ、サマン達の弟子たれと、静かに諭されているような気持ちになるのです。 」
ー佐々木愛(俳優、劇団文化座代表)

「話題になった前作「ロスト マンチュリア サマン」に続く第2弾。前作から9年の間に、満洲語を語るサマンは、どんどん居なくなって、もうあとわずかになったらしい。
恐らくこれは、満洲語を語るサマン最後のドキュメンタリーといってもいいだろう。大清帝国を築いた、満洲民族の記念すべき作品を遺した金大偉監督に敬意を表したい。」
ー藤原良雄 (藤原書店社主)
 
「金大偉が失われゆく満洲の「サマン文化」を記録し呼び覚ましながら訴えているのは、単なる地域文化の再発見などではない。むしろ、地球に抱え込まれ内蔵された「神聖エネルギー」の再喚起なくして、もはや私たちの再生はありえないという危機の表明である。地球という水の惑星をまなざすその「天空のサマン」の旅の軌跡に込められた痛みと悲しみと希望と祈りを私は本作の随所に聴いた。」
ー鎌田東二(京都大学名誉教授)
 
「我々は、今や文明の分岐点に立って呻吟している。こうした時期に、この映画は、密かにだが、我々の文明選択に関する重要な何かを示しているかに見える。                            
地上で追われ、また地上を見限り、サマンたちは天空に退いたのか?しかし、そこに彼らは住まうはずである。
天空深く架かる梯子ありき。一刻の幻視ではあれ、我々も、それを見究めようではないか。」
ー能澤壽彦(古層文化論)

「この作品を見てつくづく思った。失われつつある時にその文化の大切さに気づくものだと。 広大な美しい景色と季節を経て刻まれた人々の顔の皺。 初めて見て聞く、儀式と言語のリズム。 映像の持つ力はそれらを確かな眼力で描いていく。 あらたに知る文化への興味はいつしか自身の中の精神性を問いかける旅になる。 同時に思うのだ。失われても良い文化など一つもない。 貴重な映像の数々は人間のあり方をも語りかけてくるようだ。 カメラの視点はいつしか自分の視点となり、 映画を見ている行為は、大切な文化の姿を追求する旅の一員になっていることに気づく。 消え行く文化があることはとても悲しいことだけれど、それを何年にも渡り追ったこのロードムービーはいつまでも残る。 この尊い映画はサマンの儀式に流れるさまざまなリズムと共にしっかりと観た人の心に残る。 丹念に紡ぐようなこの映画を作ったスタッフに拍手です。ぜひ多くの方に観ていただきたいです。」
ー小林宏治 (映画監督)

「満洲サマンへのサウダージ(郷愁)によって導かれる、民族としての自己創造の系譜を指し示す地図として、 この作品が今世紀に持つ意味は極めて重大であるといえよう。」    
ー黒川五郎(哲学者・茶道家)

「本作は一作家によるドキュメンタリーという枠を超えた価値を持つ、歴史の遺産である。」
ー切通理作(評論家、映画監督)

「先祖のシャーマニズムは私の血であり、肉であり、魂だ。 天地人を統べる満洲族の精神を末裔たちが引き継ぐことが最もな先祖供養である。金大偉監督に感謝を込めて。」       
ー愛新覚羅ゆうはん(作家、風水師) 

「ある文化や言語が滅びゆくとは?
かつて日本が深く関係した文化や言語が消えようとしている。
満洲族と、日本。
両方にルーツを持つアーティスト金大偉が、もう一度それを繋ぐ。龍の如く。
シャーマンとは、越境者であり媒介者。天であり地。男であり女。」
ー赤坂真理(作家)

「金大偉氏の鋭敏な映像を映画監督という一面から見ては本質を見誤る。では彼の映像芸術の本質は何であろうか?それは感性といった陳腐な表現を超越した世界、つまり「霊的なシャーマニズムの世界観の芸術」である。」
ー簡 憲幸(プロデューサー) 

「自然界の光・音・色。
全てにつながるシャーマニズムの魂は
私の心に、しっかり響きました。」
ー杉浦 美代子(画家)

画像提供:TAII Project

金大偉(きん・たいい)
略歴(監督、音楽、撮影、製作)
中国遼寧省生まれ。父は満洲族の中国人、母は日本人。来日後、独自の技法と多彩なイマジネーションによって音楽、映像、美術などの世界を統合的に表現。近年はアジアをテーマに音楽や映像作品を創作するほか、映像空間インスタレーション展示、絵画展、ファッションショー及び映画の音楽制作、演劇舞台の演出、国内外にて音楽コンサートやイベントを行い、様々な要素を融合した斬新な空間や作品を創出している

オフィシャルwebサイト:http://kintaii.com

midizineは限られたリソースの中で、記事の制作を続けています。よろしければサポートいただけると幸いです。